「うちの会社も対象になるのか」「何から手をつければよいのか」「コストはどのくらいかかるのか」と、不安を感じている総務・労務のご担当者も多いはずです。
本記事では、改正のポイントを公的情報にもとづいて整理しつつ、中小企業が最小限のコストで体制を整えるための具体策をご紹介します。
目次
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職場の熱中症対策の重要性
職場の熱中症対策は、本格的な夏を迎えるにあたり 「努力目標」から「法的な義務」へと位置づけが変わりました 。背景には、近年の猛暑による労働災害の深刻化があります。
厚生労働省の発表(2026年5月時点)によると、令和7年(2025年)の職場における熱中症による死傷者(死亡・休業4日以上)は1,803人(前年比546人・約43%増)であり、2005年(統計開始年)以降で最多となりました。
特に、建設業において死亡者数が最も多く(2025年確定値)、屋外や高温多湿の現場を抱える事業者にとっては看過できないリスクです。

編集部
法改正と猛暑の長期化が重なる今夏は、すべての事業者が「自社は対象か」を点検すべき局面です。
職場の熱中症対策の義務化におけるポイント|規模・業種を問わず適用
職場の熱中症対策の根拠となる、厚生労働省所管の改正労働安全衛生規則(新設された第612条の2)が、2025年6月1日に施行されました。
企業の規模や業種を問わず、対象となる作業を行うすべての事業者に適用 される点が大きな特徴です。
職場の熱中症対策はWBGT基準値で判断
職場の熱中症対策が必要か判断する材料であるWBGT(暑さ指数)とは、熱中症のリスクを評価するための指標です。
まずは、作業場所のWBGT値を測定し、把握しましょう。次に、 測定した値を作業強度ごとに定められた「WBGT基準値」と照らし合わせ、基準を超えていないかを確認 します。
基準値を超える場合は、空調やスポットクーラーによる環境の冷却、作業内容や場所の変更、作業時間の短縮、休憩の延長などにより、値を下げる工夫が求められます。
気温の数字だけで判断せず、WBGTを目安に対策の要否を見極めることが、義務化への対応を実効性のあるものにします。
| 区分 | 身体作業強度(代謝率レベル)の例 | WBGT基準値(℃) | |
|---|---|---|---|
| 暑熱順化者 | 暑熱非順化者 | ||
| 0安静 | 安静、楽な座位 | 33℃ | 32℃ |
| 1低代謝率 | 軽い手作業(書く・タイピング等)、手や腕の作業、腕や脚の作業 など | 30℃ | 29℃ |
| 2中程度代謝率 | 継続的な手や腕の作業、くぎ打ち・盛土、腕や脚の作業、胴体と腕の作業 など | 28℃ | 26℃ |
| 3高代謝率 | 強度のある腕・胴体の作業、ショベル作業・ハンマー作業、重量物の荷車や手押し車を押す・引く など | 26℃ | 23℃ |
| 4極高代謝率 | 最大速度での激しい活動、激しくシャベルを使う・掘る など | 25℃ | 20℃ |
職場の熱中症対策|事業者に義務付けられた措置
職場の熱中症対策において、事業者に義務付けられた措置は大きく次の3点です。- 熱中症のおそれがある作業者を早期に報告するための体制(連絡先・担当者)の整備。
- 作業からの離脱・身体の冷却・医療機関への搬送などを定めた実施手順の作成(緊急連絡網や搬送先の所在地等を含む)。
- 整備した報告体制と作成した実施手順の2点を関係者へ周知すること。
わかりやすく言うと、 「危険なサインを見つけたら、すぐに誰へ連絡し、どう動くか」を、あらかじめ紙やデータで決めて全員に共有する 、という内容です。
なお、義務に違反した場合、労働安全衛生法第119条第1号に基づき、行為者(担当者等)に6月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。なお、法人にも同法第122条により50万円以下の罰金が科される場合があります。
WBGT値の測定そのものは直接の義務ではありませんが、リスクを客観的に判断するため、厚生労働省は測定・記録・周知を強く推奨しています。
職場での熱中症のおそれのある者がいる場合の処置の流れ
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STEP.1
発見する
まず、熱中症が疑われる症状に気づくことが起点になります。
他覚症状としては、ふらつき・生あくび・失神・大量の発汗・痙攣など、自覚症状としてはめまい・筋肉痛や筋肉の硬直(こむら返り)・頭痛・吐き気・倦怠感・高体温などが挙げられています。
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STEP.2
状態を確認する
次に、本人の状態を確認します。「意識の有無」だけで判断するのではなく、返事がおかしい、ぼーっとしているなど、普段と様子が違う場合も「異常あり」として扱うことが適当とされています。
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STEP.3
応急処置を行う
状態にかかわらず、まずは暑い作業場所から離脱させ、身体を冷却します。
意識の異常などがある場合はただちに救急隊を要請し、医療機関へ搬送しましょう。意識の異常などがない場合は、自力で水分を摂取できるかを確認します。
自力で水分を摂取できない場合は医療機関へ搬送、自力で水分を摂取できる場合は経過観察を行い、回復しない場合や症状が悪化した場合は医療機関へ搬送する対応です。
参考:職場における熱中症対策の強化について(厚生労働省)
職場の熱中症対策に伴う中小企業の現場の変化|コストを抑えた体制づくり
職場の熱中症対策を行う際、実務上における対応の柱は 「1.温度を下げる」「2.水分・塩分を補う」「3.異変を伝える体制」 の3つに整理できます。
1.温度を下げる
まず作業環境そのものの温度を下げることが基本です。
全館空調が難しい現場でも、スポットクーラーや送風機を要所に配置することで、対象基準を下回る環境づくりを進めやすくなります。
2.水分・塩分の補給
屋内外を問わず共通して必要なのが、水分・塩分の補給体制です。
例えば、ウォーターサーバーを休憩スペースに常設しておくことで、作業者がいつでも給水できる環境が整い、予防の第一歩としても活用しやすいです。
作業場での水分補給・熱中症予防対策に 「どこよりもウォーター」で、いつでも給水できる環境を整備 休憩スペースへの常設で、予防の第一歩をかんたんに整えられます。 サービス詳細を見る3.異変を伝える体制
今回の改正で最も実務負荷が大きいのが、報告体制・緊急連絡網の整備です。
改正労働安全衛生規則が義務付けているのは、設備や備品の導入そのものではなく 、「熱中症のおそれがある作業者を早期に見つけ、すぐに報告し、適切に対処する」という一連の流れを、事業場ごとにあらかじめ決めて全員に周知しておくことが義務付けられています。
熱中症による重篤化の主な原因は初期症状の見逃しや対応の遅れであり、だからこそ「誰が・誰に・どう連絡するか」を曖昧にしないことが重要です。
以下の項目を文書化し、現場の作業者全員が把握している状態にしておく
- 報告先の担当者と連絡手段
- 作業からの離脱や身体冷却の手順
- 医療機関への搬送先や所在地
また、注意したいのは、手順を「作って終わり」にしないことです。実際に体調不良が起きたとき、担当者が不在だったり、連絡先が古いままだったりすれば機能しません。
整備した内容を関係者へ確実に周知し、夏本番を迎える前に一度、連絡網が実際に機能するかを確認しておくことが、義務への対応であると同時に、従業員の命を守る最も現実的な一歩です。
職場の熱中症対策|自社の義務化対応チェックリスト
職場の熱中症対策が義務化されると聞くと、漠然と身構えてしまいがちですが、やるべきことを分解すれば、対応はそれほど複雑ではありません。
大切なのは、 「自社が対象かを見極める」ところから始め、「環境を整える」「異変に備える」へと順に進めていく必要があります。
以下のチェックリストを活用し、上から順に、自社の現状がどこまで満たせているかを確認してみてください。すべてにチェックが付けば、ひとまず義務化への基本的な対応はできていると考えて問題ありません。
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- 対象作業(WBGT28度・気温31度以上/継続1時間超・1日4時間超)が自社にあるか確認した
※対象となるのはWBGT28℃以上または気温31℃以上の環境で継続1時間超または1日4時間超の作業です(厚生労働省通達基準) - WBGT値または気温を把握する手段(測定器・予報サイト等)を用意した
- 暑さを下げる設備(空調・スポットクーラー・送風機)を整備した
- 水分・塩分を補給できる環境を常設した
- 異変を報告する体制(連絡先・担当者)を事業場ごとに定めた
- 緊急連絡網・搬送先を含む実施手順を文書化した
- 上記を関係作業者へ周知・教育した
- 対象作業(WBGT28度・気温31度以上/継続1時間超・1日4時間超)が自社にあるか確認した
チェックが付かなかった項目こそが、自社の弱点であり、優先課題です。とはいえ、すべてを一度に完璧にそろえる必要はありません。
リスクの高い作業や、対応が手薄な部分から一つずつ整えていくことが、現実的かつ着実な進め方です。
職場の熱中症対策のまとめ
職場の熱中症対策は、2025年6月の改正労働安全衛生規則によって規模・業種を問わず義務化され、違反には罰則が科される可能性があります。
中小企業にとっては負担に感じられる一方、対応の柱は「環境を下げる・水分を補う・異変を伝える」の3点に整理でき、いずれも段階的に着手できます。
まずは自社が対象作業に該当するかを点検し、不足している部分から優先的に整えていくことが現実的です。本格的な夏が来る前の、早めの準備をおすすめします。
この記事を書いたライター
Wiz Cloud編集部
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