「SDGsへの取り組みによるコストや負担を防ぐには?」「他のホテルはどんな取り組みをしているの?」
ホテル経営において、SDGsへの取り組みはブランド価値の向上や長期的な人材確保の観点から欠かせないテーマとなっています。
しかし、いざ実践を検討しても「アメニティ変更によるコスト増」や「現場の人手不足」などが課題となり、具体的に何から手をつけるべきか悩む経営者は少なくありません。
本記事では、ホテル業界に特化したSDGsの具体的な取り組み事例をはじめ、コスト削減や利益向上に直結する施策、導入を成功させる3つのステップを分かりやすく解説します。
目次
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ホテル経営における基礎的なノウハウや全体的な課題解決策について知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

なぜ今、ホテルのSDGs対応が重要なのか?
なぜ今、SDGs対応が経営課題になっているのか
近年、気候変動や資源問題への関心の高まりを背景に、企業に環境配慮や社会的責任を求める動きが広がっています。
その影響は観光業界にも及び、宿泊施設の取り組みを公式サイトや口コミで確認する旅行者や求職者も見られるようになりました。
そのため、 ホテルがSDGsに取り組まない場合、比較検討の段階で予約や応募の候補から外れやすくなり、結果として売上や採用力が低下するリスクがあります 。
さらに、プラスチック資源循環法などの法規制が進む中、対応を先送りすると短期間で集中対応が必要になり、コストや業務負担が急増します。
こうした外部環境の変化により、SDGs対応は「余力があれば行う施策」ではなく、「競争力を維持するための経営課題」へと位置づけが変わっているのです。
※SDGs(エスディージーズ)とは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略で、国連が2015年に採択した2030年までに達成すべき17の国際目標です。地球環境の保全、貧困や格差の解消、健康・教育の向上など幅広い分野が対象で、企業や個人が社会や環境に配慮した行動を取ることが求められます。
SDGs推進においてホテルが抱える内部課題
SDGsへの配慮が重要視される中、ホテルが具体的な取り組みを推進するには内部的な制約が存在します。
例えば、客室アメニティを竹製などに切り替えると仕入れ原価が上昇 します。原価上昇は利益率を押し下げるため、経営判断が慎重になり、導入が遅れるケースも少なくありません。
さらに、帝国データバンクの2026年1月調査では、宿泊業では非正社員不足は改善傾向にあるものの、施策を設計・定着させる正社員の余力は依然不足しています。
このように、原価上昇と人手不足の二つの内部課題が重なると、取り組みが一過性に終わりやすく、長期的な改善や経済効果の最大化が難しくなります。
参照:人手不足に対する企業の動向調査(2026年1月)│帝国データバンク
SDGs対応がもたらす経営メリット
とはいえ、初期負担を乗り越えて施策を実行すれば、売上・利益・採用面で具体的な成果が見込めます。環境配慮の姿勢が顧客や求職者の選択基準になるからです。
- 経費の削減
例えばエコ清掃を導入すると、洗濯回数が減ります。そのため水道や洗剤の使用量が減り、変動費が下がることで利益率の改善につながります。 - 集客力の向上
環境対応を明示すると、比較検討時に優位に立てます。結果として、予約数の増加が期待できます。 - 採用の強化
社会課題に取り組む姿勢は、学生や求職者の共感を得やすい要素です。そのため、応募数の安定や人材定着の向上につながります。
ホテル業界の具体的なSDGs取り組み施策
アメニティの削減と脱プラスチック化
2022年施行の「プラスチック資源循環法」により、ホテルは使い捨てプラスチック製品の削減を迫られています。
この動きを受け、多くのホテルは客室アメニティをフロント前で必要な分だけ選ぶ方式に変更しました。また、歯ブラシの素材を竹製やバイオマスに切り替える施設も増えています 。
未使用のまま廃棄されるアメニティが減ることで、廃棄コストの削減につながるうえ、長期的には仕入れ費用も抑制できるため、環境負荷と経済効率の両方を改善可能です。
プラスチック資源循環促進法(プラ新法)とは、プラスチック製品の設計・製造から廃棄・リサイクルまでの全ライフサイクルで、3R(リデュース・リユース・リサイクル)と再生可能資源への転換(Renewable)を推進する法律です。飲食店やホテルなどの事業者には、使い捨てプラスチック製品の削減や分別の徹底が義務付けられ、自治体による資源回収の仕組みも併せて促進されます。
※参照:プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律│e-Gov 法令検索
客室のペットボトル廃止とウォーターサーバー導入
各フロアや客室へのウォーターサーバー設置がトレンドに
客室サービスのペットボトル入り飲料水を廃止することで、大量のプラスチックごみを削減できます。この取り組みは、SDGsが掲げる地球環境保護に直接つながります。
代替策として、 客室にコンパクトなウォーターサーバーを置くか、各フロアの共有部に浄水型サーバーを設置して宿泊客に水を汲んでもらう ことで、利便性を確保しつつ環境負荷を減らせます。
ホテル客室や共有部に最適なウォーターサーバー2選
ホテルでは、景観を損なわず、スタッフの業務負担を軽減できるウォーターサーバーの導入が効果的です。
以下の2つは、省スペース性やボトル交換のしやすさに優れ、ホテル業務の効率化とSDGs推進に役立ちます。
| サービス名 | どこよりもウォーター | コスモウォーター |
|---|---|---|
| 公式サイト リンク |
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| メリット | コンパクトな外観で客室やラウンジに馴染みます。温水・冷水両対応で、客室での温かいお茶の提供もスムーズです。 | ボトルを下部に設置するため、重いボトルを持ち上げる必要がなく、清掃スタッフの負担を軽減します。使用後は潰して廃棄でき、ゴミ保管スペースも圧迫しません。 |
清掃・リネンのエコ化で環境負荷とコストを削減
連泊する宿泊客に対して、シーツやタオルの交換を希望制にする「エコ清掃」を導入することで、洗濯回数が減ります 。
これにより、水や洗剤の使用量、ボイラー稼働によるCO2排出量を削減でき、環境負荷の低減につながります。
同時に、リネンのクリーニング費用や清掃スタッフの人件費も削減できるため、ホテルは経済的なメリットも得られます。
食品ロス(フードロス)対策と地産地消の推進
宴会場での食べ残しを防ぐため、開始30分と終了前10分に着席して食事を楽しむ「3010運動」や、持ち帰り専用容器「mottECO」の提供を導入 しましょう。
これにより、食品ロスを削減でき、SDGsの目標である資源の有効活用に貢献することが可能です。
また、地元食材をメニューに組み込む「地産地消」を推進すると、遠方からの輸送にかかる燃料使用やCO2排出を減らせます。
同時に地域の農家や漁業者の収入を支えられるため、ホテルと地域の共存共栄を実現できます。
ダイバーシティ推進と働きやすい職場づくり
多様な人材が長く働ける環境を整えることも、ホテルの重要なSDGs目標です。
育児や介護と両立できる短時間勤務制度や、国籍・性別を問わない公平な採用を導入 することで、従業員の働きやすさが向上します。
働きがいが増すことで離職率が低下し、その結果、新規採用コストを抑えつつ安定した運営基盤を築くことが可能です。
国内外の先進的なホテルのSDGs取り組み事例
国内:帝国ホテル 東京・大阪に学ぶサステナブル経営
帝国ホテルは、環境負荷低減を明確な数値目標に落とし込み、SDGsを経営に反映しています。
東京では客室の歯ブラシなどを竹や木製に切り替えたことで、年間約13トンのプラスチックごみ削減に成功 しました。
大阪では全館にCO2フリー電力を導入し、さらに使用済みコルク栓をコースターに再利用することで廃棄物も減らしています。
これらの施策により、経費削減とブランド価値向上が同時に可能となります。
国内:宿泊客を巻き込むイベント企画や寄付プログラム
ホテルのSDGs活動は、宿泊客が参加することで効果を最大化できます。
ザ パーク フロント ホテルでは、アメニティ使用や清掃辞退の分をホテル側が環境保全基金に寄付する制度を導入 しました。
また、芝パークホテルでは、宿泊客から集めた本を販売し途上国へ寄付しています。
宿泊客が自然に参加できる仕組みにすることで、環境保全を実現しつつ、顧客満足度も向上します。
海外:自然環境保護と再生可能エネルギーの徹底活用
海外の先進ホテルは、施設運営に必要な資源を自給するレベルまでSDGsを実践しています。
ブラジルの「ローズウッド サンパウロ」では、敷地内のソーラーパネルで電力をまかなうことで再生可能エネルギー利用を徹底 しました。
さらに館内の濾過システムで飲料水を自ら製造し、使い捨てプラスチックを完全に排除しています。
これにより長期的な水道光熱費を抑えつつ、環境負荷を低減できます。
参照:Rosewood São Paulo Opens Today│Rosewood Hotels
ホテルにおけるSDGs施策を成功させる3つのステップ
(1)自社の理念に合った重点目標の設定
ホテルがSDGsに取り組む際は、まず経営理念に沿った目標を絞り込むことが重要です。
全17目標に対応すると人手や予算が分散し、現場負担が増えて施策が続きません 。
例えば「地域との共存」を理念に掲げるホテルは、地元農家の規格外野菜を仕入れることでフードロスを減らしつつ地産地消を実現できます。
こうした施策により、現場負担を抑えつつ持続可能な成果を得られます。
(2)従業員への教育とオペレーションへの落とし込み
ホテルがSDGs目標を設定したら、従業員に目的を明確に伝え、業務手順に組み込む必要があります。
従業員の理解がないまま新ルールを導入すると、作業漏れや混乱が生じ施策が定着しません 。
例えばアメニティをフロント提供に変更する場合、従業員に「ごみ削減が目的」と事前に共有し、チェックイン時の案内トークを練習すれば、宿泊客に意図が伝わりやすくなり、運営もスムーズに移行できます。
(3)宿泊客への適切なアナウンスとPR戦略
ホテルのSDGs施策は、宿泊客に分かりやすく伝え参加を促すことで効果が高まります。
意図が伝わらないと「サービス低下」と誤解され不満が生じる ためです。
例えば連泊時のエコ清掃では、客室案内に「ご協力で削減できたリネン代の一部を環境保護団体へ寄付」と明記すると、宿泊客は社会貢献に参加している実感を得られ、ホテルへの信頼感と満足度が向上します。
注意点:グリーンウォッシュを防ぐ透明性確保
ホテルがSDGsをPRする際は、実態のない環境配慮を装う「グリーンウォッシュ」を避ける必要があります。
PR内容と実態にズレがあると、事実が明らかになった際に信用を大きく失います 。
例えば「地元食材を使用」と宣伝する場合は、生産地や農家名をメニューに明記し、プラスチック削減量など数値を公式サイトで定期公開すると、取り組みの透明性が増し、ホテルの信頼性向上につながります。
まとめ:SDGs推進で持続可能で選ばれるホテル経営を
ホテル経営におけるSDGs推進は、単なる社会貢献にとどまりません。
エコ清掃やウォーターサーバー導入といった具体的施策を実行すると、水道光熱費やアメニティ仕入れのコストを直接削減できます。
その結果、環境配慮の姿勢が宿泊客に伝わり、社会課題に関心の高い旅行者から共感を得られ、優先的な宿泊予約につながります。
理念に合った取り組みを着実に行うことで、コスト削減と集客増の効果が積み重なり、長期的に利益を生む持続可能なホテル運営が可能です。
ホテルの集客戦略やオペレーション改善など、ホテル経営全般に関するお悩みは、以下の記事も合わせてご参照ください。

この記事を書いたライター
Wiz Cloud編集部
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