「地方自治体が力を入れているDX推進室とは?」
「自治体のDXを進めたいが、どのようなアプローチでDXを推進すべき?」
DX推進室とは、政府の方針を主導に、デジタル技術を活用することで、市民の生活がより豊かになるように取り組みを図る自治体の組織です。
しかし「DX推進室は具体的に何をしている?」「DX推進室の設置を成功させるには?」という疑問を抱いている担当者の方は多いと思います。
そこで本記事では、地方自治体が力を入れているDX推進室について解説し、地方自治体での「DX推進室」の具体例も紹介します。
DX推進室を成功させるポイントも紹介しているため、どのようなアプローチでDXを推進すべきか悩んでいる地方自治体の担当者の方必見です!
DX推進室とは
DX推進室とは、 デジタル技術を活用することで、市民の生活・暮らしがより豊かになるように取り組みを図る自治体の組織です。
そもそも、DXとはデジタル・トランスフォーメーションの略称で、情報技術で人々の生活を多方面でより良い方向に変化させるという意味です。
つまり、DX推進室は、自治体のDX化を推し進めることで、市民の生活・暮らしがより豊かになることを目指しています。
地方自治体で力をいれている理由
DX推進室が地方自治体で力をいれている理由は、 政府の方針において、デジタル社会の実現を達成することが求められているからです。
総務省の発表によると、政府で「デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針」が決定され、民間はもちろん各自治体も主体的なDX化が推奨されています。
このように、DX推進室は政府の方針を主導に、DXによって市民の生活・暮らしがより豊かになるために、自治体が力を入れています。
DX推進室の役割
DX推進室の役割は、自治体DXを推し進めることです。 自治体DXとは、自治体がデジタル技術を活用し、住民の利便性や行政サービス向上を目指す取り組みのことです。
つまり、 DX推進室の役割は、デジタル技術やデータ等を活用して、地域の課題解決や新たな地域活力の創出を図ることといえます。
DX推進室における取り組み
新たな価値の創出
DX推進室における取り組みの1つ目は、新たな価値を創出することです。新たな価値は、 これまでなかった新しい組み合わせを見つけることで創出します。
たとえば、普段当たり前に行っている業務過程に、これまでに誰も思いつかなかった仕事の手順や技術を取り入れるとします。
それによって、業務効率が5倍になった、またはプラスアルファーの価値を産み出すことができるようになることが、新たな価値の創出です。
デジタルへの移行
DX推進室における取り組みの2つ目は、デジタルへ移行することです。デジタルにできることは、すべて移行することが重要です。
たとえば、紙をPDFに置き換えるペーパーレス化や押印をクラウド上で行う電子契約などが挙げられます。
上記のようにパターン化された手順をデジタル化することで、人にしかできないことに時間を割けるようになります。
つまり、 そこで生みだされた時間を、新たな価値を創出するために使えるようになるのです。
変化が早い体質への変革
DX推進室における取り組みの3つ目は、変化が早い体質へ変革することです。
デジタルへ移行したことで生みだされた時間で、新たな価値を創出しても、それを実行してビジネスに変えなければ、新しい価値は成立しません。
最終的に、新たな価値をビジネスに変えるのは人や組織のため、 新たな価値(変化)に速やかに対応できる組織へと変革することが必要です。
地方自治体での「DX推進室」具体例
愛知県「愛知県DX推進本部」
地方自治体での「DX推進室」具体例の1つ目に、愛知県の「愛知県DX推進本部」が挙げられます。
2021年12月には、愛知県のデジタル化・DXを推進する 「あいちDX推進プラン2025」を策定しています。
その策定では、官民におけるDXの推進が必須という認識のもと、県内企業のデジタル化・デジタル人材の育成にも取り組んでいます。
また、その推進体制として総務局内に「DX推進室」を設置し、 経済産業局情報通信(ICT)政策推進監と連携・協力しながら、デジタル化・DXを着実に進めています。
山口県萩市「総合政策部 DX推進室」
地方自治体での「DX推進室」具体例の2つ目に、山口県萩市の「総合政策部 DX推進室」が挙げられます。
具体的には、行政手続きのオンライン化、RPA(定型業務自動化)やAIの導入により、行政サービスの利便性向上や行政業務の効率化を進めています。
さらに、スマホの活用講座を各地で開催するなど、すべての人がデジタル化の恩恵を受けることのできる社会の実現を目指しています。
萩市は、市役所全庁を挙げて横断的に検討協議する場として、市長・副市長・教育長・各部局長を構成員とした「DX推進本部」を設置しています。
また、 市内IT企業がオブザーバとして参加し、専門的知見からアドバイスをする「DX連携会議」も設置するなど、推進体制の構築を行っています。
宮城県名取市「企画部 DX推進室」
地方自治体での「DX推進室」具体例の3つ目に、宮城県名取市の「企画部 DX推進室」が挙げられます。
名取市のDX推進室は、DX化の取り組みに向けて 東日本電信電話株式会社(NTT東日本)と連携協定を締結し、デジタル専門人材が参加しています。
自治体におけるDXは「行政のDX」と「地域のDX」に大きく分かれますが、名取市のDX推進室ではとりわけ「地域のDX」に取り組んでいます。
「地域のDX」の一例として、MaaSやICT機器を活用したスマート農業、デジタル教材による児童生徒の学習支援、スマホ教室などの高齢者のデジタルデバイド対策を行うことが挙げられます。
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MaaSとは?
- MaaSとは、公共交通等の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行えるサービスです。
目的地の観光や医療等とも連携できます。
福井県福井市「都市戦略部 DX推進室」
地方自治体での「DX推進室」具体例の4つ目に、福井県福井市の「都市戦略部 DX推進室」が挙げられます。
福井市は、令和4年3月にDXを推進していくため、 「福井市DX推進計画」及びその具体的な事業計画である 「福井市DX推進計画実施計画(アクションプラン)」を策定しました。
本計画は、「暮らし」と「産業」の視点に分けてDXを推進するとともに、市役所自身がまずDXに取り組んでいく必要があることから、「行政」も加えた3つの基本目標を掲げています。
計画期間は令和4年度から令和8年度までの5年間で、「第八次福井市総合計画」の将来都市像である「みんなが輝く 全国に誇れる ふくい」の実現に向けて、施策が推し進められています。
暮らしのDX | 目標の意味 | 暮らしにおける様々な課題をDXの推進によって解決し、豊かで快適に暮らせるまちを目指す |
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取組分野 | 公共交通/中心市街地/生活インフラ/地域活性化/共生・協働/福祉/環境/防災・安全安心/文化・歴史・自然/学校教育/生涯学習 | |
産業のDX | 目標の意味 | 産業における様々な課題をDXの推進によって解決し、地域産業の活性化や活き活きと働き続けることができるまちを目指す |
取組分野 | 農林水産業/商工業/観光 | |
行政のDX | 目標の意味 | 行政における様々な課題をDXの推進によって解決し、市民サービスの向上と行政事務の効率化を目指す |
取組分野 | 持続可能な行政運営 |
大阪府寝屋川市「経営企画部 DX推進室」
地方自治体での「DX推進室」具体例の5つ目に、大阪府寝屋川市の「経営企画部 DX推進室」が挙げられます。
寝屋川市は、 「寝屋川市デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」及び計画の取組に係る内容や目標値等を定める 「寝屋川市デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進アクションプラン」を策定しました。
本計画は、「行政事務の効率化」「暮らしの利便性の向上」「社会課題の解決、新たな価値の創出」の3つの基本方針を掲げています。
計画期間は令和7年度までで、デジタル技術の活用によって進化した「スマート・ねやがわ」の実現を目指し、DX推進計画が推し進められています。
基本方針① | 方針名称 | 行政事務の効率化を支える情報基盤の整備促進 |
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主な取り組み |
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基本方針② | 方針名称 | 暮らしの利便性を向上させるデジタル技術の活用 |
主な取り組み |
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基本方針③ | 方針名称 | 社会課題の解決、新たな価値の創出に向けたデジタル技術の活用 |
主な取り組み |
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DX推進室の設置で成功させるポイント
組織体制を整備する
DX推進室の設置で成功させるポイントの1つ目に、組織体制を整備することが挙げられます。
DXを進めるアイデアが発案されたとしても、 そのアイデアに対して速やかに対応して実行する組織でなければ、DXは進みません。
DX推進室だけでなく、あらゆる組織が横断的にDXを進められるような仕組みに整え、組織体制を整備する必要があります。
具体的な重要課題を把握する
DX推進室の設置で成功させるポイントの2つ目に、具体的な重要課題を把握することが挙げられます。
各自治体のDXを成功させるためには、いくつかの課題が残り、 一般的な課題としてはDX人材が不足していることが挙げられます。
DX推進室の設置する際に、どのような課題が残るか洗いざらい話し合い、その課題に対する対策を図りましょう。
ITツールを使いこなせる環境を整備する
DX推進室の設置で成功させるポイントの3つ目に、ITツールを使いこなせる環境を整備することが挙げられます。
各自治体は、 ハンコや紙の書類を使った業務が根強く残っているように、業務をデジタル化せずにアナログ式のままの場合が多いです。
まずはITツールを使いこなせる環境を整備し、DXの必要性をしっかりと共有したうえで、デジタル活用の文化を浸透させましょう。
DXを進められる人材を確保・育成する
DX推進室の設置で成功させるポイントの4つ目に、DXを進められる人材を確保・育成することが挙げられます。
デジタル・ITに関して知識がある人材を確保するのは難しいため、 国が提供する外部人材確保に向けた支援サービスを活用するのがおすすめです。
また、外部から人材を確保するだけでなく、DX施策の基盤となる内部の人材を確保するために、各自治体で独自に人材を育成することも重要です。
市民と行政のコミュニケーションをとる
DX推進室の設置で成功させるポイントの5つ目に、市民と行政のコミュニケーションをとることが挙げられます。
行政がデジタル化を進めても、 デジタル化したモノの取得方法や使い方を市民が理解していなければ、デジタル化は一向に進みません。
自治体全体でデジタル化を促進し、市民がデジタルの恩恵を受けられるようにするためにも、行政は市民にDX施策を徹底周知する必要があります。
地方自治体のDXが必要な理由
少子化が進んでいるため
地方自治体のDXが必要な理由の1つ目に、少子化が進んでいることが挙げられます。
少子化によって役所の職員の確保が困難になると、アナログ式のままでは対応しきれなくなり、将来的に公共サービスの提供も危ぶまれます。
DXによって業務や手続きをデジタル化することで、効率化を図ることができ、人材不足を心配する必要がなくなります。
国家レベルでの損失を招く可能性がある
地方自治体のDXが必要な理由の2つ目に、国家レベルでの損失を招く可能性があることが挙げられます。
2018年に経済産業省が発表した「DXレポート」では、DXが進まず古いシステムを運用し続けた場合、 2025年には日本全体で最大12兆円の経済的損失を生む可能性があるとの結果が出ています。
DXが進まないことで国家レベルでの損失を招き、自治体においても例外ではないため、日本全体でDXを推し進める必要があります。
新型コロナウイルス感染拡大のため
地方自治体のDXが必要な理由の3つ目に、新型コロナウイルスの感染が拡大していることが挙げられます。
新型コロナウイルスの感染拡大により、従来のような対面型業務や行政手続きは感染のリスクが大きく、オンライン化が勧められました。
このように感染拡大によって、 各自治体で衛生面と業務効率面とを両立するには、オンライン化やデジタル化が不可欠であることが明らかになりました。
地方自治体のDX推進に向けた政府の動き
情報システムの標準化
地方自治体のDX推進に向けた政府の動きの1つ目は、情報システムの標準化です。
目標時期を2025年度とし、アナログで行われている基幹系17業務について、新システム「(仮称)Gov-Cloud」への移行が進められています。
現在、各自治体で導入しているシステムはばらつきがあるため、 これらのシステムの統一化を図ることで業務の効率化を大きく進めます。
マイナンバーカードの普及
地方自治体のDX推進に向けた政府の動きの2つ目は、マイナンバーカードの普及です。
2022年度末までにほとんどの住民がマイナンバーカードを保有していることを目指し、カードでできることを着実に増やすとともに、普及促進の取り組みを行っています。
マイナンバーカードは、 市民の生活の利便性をあげ、行政も効率的に手続きを行えるなどのメリットが多いため、普及に力を入れているのです。
行政手続きのオンライン化
地方自治体のDX推進に向けた政府の動きの3つ目は、行政手続きのオンライン化です。
2022年度末を目指して、マイナポータルからマイナンバーカードを用いてオンライン手続きを可能にする取り組みです。
手続きをオンライン化することで、 市民はかんたんに手続きでき、行政も手続き業務を効率化できるため、取り組みが進められています。
AIやRPAの利用促進
地方自治体のDX推進に向けた政府の動きの4つ目は、AIやRPAの利用促進です。
自治体の情報システムの標準化と行政手続のオンライン化による業務見直しを機会に、AIやRPAなどのシステムを導入する取り組みです。
AIやRPAなどの最新のテクノロジーを導入することで、 膨大な事務作業を自動化でき現場の負担を大幅に減らせるため、導入を促進しています。
テレワークの導入推進
地方自治体のDX推進に向けた政府の動きの5つ目は、テレワークの導入推進です。
テレワーク導入事例やセキュリティポリシーガイドライン等を参考に、テレワークの導入・活用を推進する取り組みです。
民間企業だけでなく行政もテレワークの環境を整備することで、衛生面に配慮しながら、 業務の効率化と生産性の向上が見込めます。
セキュリティ対策の徹底
地方自治体のDX推進に向けた政府の動きの6つ目は、セキュリティ対策の徹底です。
改定セキュリティポリシーガイドラインを踏まえて、適切にセキュリティポリシーの見直しを行い、セキュリティ対策を徹底する取り組みです。
サイバー攻撃などのトラブルは、国民の情報漏洩に繋がるため、 DXと同時並行でセキュリティ対策やネットリテラシーの向上が必要不可欠です。
総務省によるDX推進の手順書紹介
地方自治体のDX推進に向けて、総務省は令和3年7月に「自治体DX推進手順書」を作成し、以下の4ステップでDX推進の手順を紹介しています。
自治体DX全体手順書(2023.1改定) |
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DXは一時しのぎに取り組むものではなく、長期的なゴールを定めて計画を策定し、段階的に施策を進めていくことが大切です。
そのため、自治体が着実にDXに取り組めるよう、 総務省によるDX推進の手順書を参考にしながら取り組むことがおすすめです。
▶「自治体DX推進手順書の概要」はこちらから
▶自治体DX推進手順書について 総務省のサイトはこちら
まとめ
今回は、地方自治体が力を入れているDX推進室について紹介し、地方自治体のDXが必要な理由やDX推進室を成功させるポイントを解説しました。
DX推進室とは、政府の方針を主導に、デジタル技術を活用することで、市民の生活がより豊かになるように取り組みを図る自治体の組織です。
また、国全体でDX推進室の設置が進められている中、どのようなアプローチでDXを推進すべきか悩んでいる自治体の担当者の方も多いと思います。
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この記事を書いたライター
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