会社の法人携帯を私的利用させることで起こるリスクと防止策

法人携帯は、社内での通話や業務効率改善に役立つ便利なツールです。社員が業務の範囲内で使う法人携帯は、個人が私用で使うことは認められていません。

しかし、実際には仕事以外の通信や通話などの履歴を調べるのは大変手間のかかる作業で、細かくチェックできるわけではなく、知らぬ間に社員が私的利用しているケースも少なくありません。そのため、私的利用を防ぐためには、具体的なルール作りやチェック機構が必要です。

この記事では私的利用によりどのようなリスクが生じ、どの程度の罰則が設けられるのか、私的利用を防ぐための手立てについて解説します。

 

法人携帯の私的利用で起こるリスク

法人携帯が私的利用されると、具体的にどのようなリスクが考えられるでしょうか。社員の「1回や2回くらい大丈夫」という認識が、どのようなリスクを会社にもたらすか解説します。

経費の横領

そもそも法人携帯とは会社が所有権を持ち、回線料金等の費用も会社が負担しているものです。すなわち、費用は会社の経費から出ています。

法人携帯を私的利用するということは、会社の経費を横領していることになります。大げさだと思う方もいるでしょうが、会社全体で数十人~数百人が法人携帯を利用していると仮定して、それだけの人が私的利用をするとどうなるでしょうか。

会社にとっては毎月の大きなコストになり、経営を圧迫する可能性も出てきます。また、会社の経営面だけでなく、私的利用した従業員にも大きなリスクがあります。それは、会社からの懲戒処分という制裁を受ける可能性があるということです。

さらに、会社から損害賠償請求を受けることも考えられるので、私的利用は決してしないでください。

情報漏洩

コストの面だけでなく、私的利用による会社情報の漏洩も危険です。法人携帯は電話帳が社内で共有されていることもあり、機密情報や取引先の情報が外部に漏洩してしまうリスクがあります。

セキュリティ対策を施していても、完全にリスクをゼロにすることは難しく、特に顧客の個人情報漏洩は会社の信頼、社会的地位にも影響します。過去にも会社の個人情報流出で、会社が損害賠償など社会的制裁を受けたケースもあります。

万が一に備えて、しっかりとした法人携帯の取り扱い規則、罰則規定の制定が必要です。

最悪の場合懲戒処分も

法人携帯の私的利用が発覚した場合、どのくらいの処分が科されるののでしょうか。

会社としてできる処分では、最も重い「懲戒解雇処分」も考えられます。それ以外にも私的利用の悪質性によって、様々な処分があり得るため紹介します。

懲戒処分とは

懲戒処分は、普段の仕事ではあまり馴染みのない方がほとんどかと思います。懲戒処分とは、社内の秩序を乱した、または重大な違反行為をした社員に対して会社が下す処分のことです。軽いものなら戒告・譴責(けんせき)、減給、重いものは降格、懲戒解雇もあります。

特に最も重い懲戒解雇は、離職票に「重責解雇」と記載され、後の転職活動でも重大な影響を及ぼします。採用する企業にとっても過去に問題を起こした従業員は、同じ問題を起こす可能性があると警戒されるからです。会社にとって不利益になる行為は慎み、会社に隠して私的利用すれば懲戒処分の対象になる危険性もあると認識してください。

懲戒処分になる理由

懲戒処分は、普通に働いてれば下されることのない処分です。では、どのような理由で懲戒処分を下されるのか解説します。懲戒処分の理由に明確な法的基準はなく、会社によって決められます。

具体的には次のようなケースで処分されることが多いです。

  • 会社の名誉を傷つける犯罪行為
  • 会社の規律を乱す行為(パワハラ・セクハラ・恐喝など)
  • 長期または繰り返しの無断欠勤(2週間以上の無断欠勤など)
  • 業務上の地位を利用した犯罪行為

上記以外にも懲戒処分になるケースは様々ですが、いずれも会社にとって不利益になる行為をすることが理由として挙げられます。

法人携帯の私的利用は「業務上の地位を利用した犯罪行為」に分類される可能性があり、横領と同じ扱いです。そのため、最悪の場合は懲戒解雇もあり得るため、私的利用は決してしてはいけません。

法人携帯の私的利用防止策

法人携帯の私的利用により、どのようなリスクがあるのか理解できたところで、どうすれば私的利用を防止できるか対策を紹介します。

私的利用を防止するには、各社員の利用料金を会社側で管理すること、法人携帯導入前に利用規則を整備すること、そして会社が各端末を一括管理できることです。どのような対策があるのか、確認していきます。

端末ごとの料金を把握

法人携帯を正しく管理するには、各端末の利用料金を会社側で把握することが対策になります。通常、料金は一括で請求され、細かい料金まではチェックしていない場合もあります。しかし、各端末でどのくらい通話・通信に使用されているか、1ヵ月に1回はチェックしてください。

そうすることで、誰が月々にどのくらい使用しているのか料金も把握できます。もし私的利用をしている従業員がいれば、利用料金が急激に高くなることで判明するでしょう。

法人携帯を導入する前の仕組み作り

法人携帯をこれから導入する場合、事前に利用規則を作成することも対策になります。利用規則を定めていないと、利用する従業員も「このくらいなら大丈夫」と甘い認識になり、私的な通信が増えてしまいます。また、明確な罰則の基準も定めないと、感覚的に罰則が適用されて不公平感も強まるでしょう。

そのため、次のように具体的な利用規則を定めるようにしてください。

  • 社用携帯の私的な利用を厳禁とする
  • 社用携帯は業務時間外の利用を禁止し、退勤の際は端末を所定の位置に返還する
  • 社用携帯を無断で他人に貸与しない
  • 会社は定期的に貸与した社用携帯の利用状況・通話記録を確認し、私的利用が判明した場合には使用料金を利用者から徴収する
  • 社用携帯は勤務時間中、位置情報を把握するためGPSをオンにしておくこと

利用規則を明確にすることで従業員が迷うことがなくなり、罰則規定も設けることで私的利用の抑止にも繋がります。法人携帯を導入する前から利用規則を作り、利用する従業員への周知徹底を心掛けましょう。

全端末を一括管理

法人携帯を会社側で貸与した端末の一括管理する方法で、私的利用を防止することも可能です。会社側で管理できるのは利用料金の管理、通信を一定額でストップするといった各端末の利用を制限することです。

管理者側から許可がなければ、ブラウザの使用やアプリのダウンロードの制限をすることも可能で、規制をかけることで私的利用を未然に防止できます。利用規則によって一定の効果は期待できるものの、完全に私的利用を防ぐことは難しいのが現実です。そのため、管理者側から一定の規制をかけることも私的利用防止の観点では重要な対策です。

会社と従業員の信頼関係にも関わる内容なので、突然に利用を規制するのではなく、私的利用の状況が改善しない場合には、規制をかけることも手段として検討してください。

私的利用防止におすすめなプラン

会社側でできる私的利用防止策については紹介しましたが、より効果的な対策を紹介します。

私的利用を防止するなら、会社側での管理、規制をしやすいほうが効果が出やすく、料金も把握しやすいとより良いでしょう。そこで法人携帯の管理者向けに、各キャリアで管理しやすいサービスとしてMDM((Mobile Device Management)を提供しています。

キャリアごとのサービス名称と内容を紹介するので、法人携帯を選ぶ際の参考にしてください。

ソフトバンク

ソフトバンクで私的利用防止におすすめなプランは、「ミニフィットプラン+」です。こちらはデータ通信1~3GBのプランで、必要に応じてデータ通信量を制限、都度購入できます。

月額2,980円から利用でき、私的利用防止対策のMDM「ビジネス・コンシェルデバイスマネジメント」も利用できます。サービス内容は、複数台のスマートフォン、タブレット端末を遠隔から一元管理・運用できる仕組みです。

ソフトバンクはス、マートフォン利用における課題として次の3つを挙げています。

  • 多種多様なデバイスを社員が利用しているため一元管理が必要
  • 紛失、盗難あるいはウィルスに感染した際の情報漏洩対策が必要
  • 業務利用端末を私的利用させない

これらの課題を解決する対策として、「ビジネス・コンシェルデバイスマネジメント」のサービスを行っています。

ビジネス・コンシェルデバイスマネジメントでできることは、次の通りです。

  • 従業員の持つスマートフォン、タブレット、PCを管理者が1つの画面で管理できる
  • パスワード設定、アプリ・カメラ・テザリングの制限をリモートで設定できる
  • ウィルス対策ソフトの導入
  • 業務に必要なアプリを管理者側から配信できる
  • 紛失、盗難時の情報漏洩対策に24時間待機のヘルプデスクを設置
  • PC操作ログを管理画面で確認できる

こうした機能を持つことで、従業員が法人携帯を私的利用することを防止し、ウィルス対策、紛失・盗難時も対応してくれます。初期費用は無料、スマートフォンやPCに適用すると1つのIDにつき400~500円が必要です。私的利用で掛かる経費と比較して、コスト削減になる方法を選択してください。

ソフトバンク公式HP:https://www.softbank.jp/biz/mobile/priceplan/

au

auで私的利用を防止しつつ、お得に利用するなら「ピタットプラン 4G LTE/5G」がおすすめです。ピタットプランは1GBまでは1,980円、1GB~4GBまでは2,980円、4GB~7GBまでは4,480円とステップ式に料金が変動するのが特徴です。

毎月のデータ通信量が一定ならば金額に変動が少なく、逆にデータ通信量が多ければ料金が高くなるのがすぐにわかり、私的利用をすればわかりやすくなっています。また、通常の料金プランのほかに、MDMサービスの適用もおすすめです。

KDDIが提供している「KDDI Smart Mobile Safety Manager」はスマートフォン、タブレットの包括管理を可能にしてくれます。

その特長は次の通りです。

  • 管理者側で端末のリモートロックとワイプが可能
  • 各端末のWi-Fi利用の制限、パスワード設定がリモートで可能
  • 位置情報、セキュリティの管理
  • ウィルス対策ソフトの配信
  • アプリケーションなどの初期設定が一元管理可能

他にも、ネットワークを時間帯に応じて自動的に切り替えることも可能で、法人携帯の私的利用防止効果が高いサービスです。管理者側で法人携帯の一元管理により、不要なアプリの一切をインストールできないように設定し、通信できるエリアも限定できるので、仕事以外での使用をほぼシャットアウトできます。

特に、特定の場所以外でのWi-Fi利用を制限できるため、ウィルスや情報漏洩への対策は強いのがKDDI Smart Mobile Safety Managerのサービスです。また、「au料金管理サポートサービス」も料金管理の面では有効です。

毎月の請求をダウンロードできるサービスで、「回線別請求内訳」も把握できるので、どの端末がよく使用されているか把握できます。上記2つのサービスはKDDI Smart Mobile Safety Managerは月額330円、au料金管理サポートサービスは無料なので、ぜひ活用してみてください。

au公式HP:https://biz.kddi.com/service/mobile/

ドコモ

ドコモを利用するなら「ギガライト」のプランがおすすめです。

ギガライトは1GB までは3,465円、1GB~3GBまでは4,565円、3GB~5GBまでは5,665円、5GB~7GBまでは6,765円で利用できます。各端末のデータ通信量を一元管理できれば、私的利用を防止しつつ、通信コストも抑えられるでしょう。ドコモの私的利用防止のMDMには、「あんしんマネージャー」と呼ばれるサービスがあります。

あんしんマネージャーで利用できるサービスは次の通りです。

  • 端末のロック・利用の中断及び初期化
  • 利用デバイス不一致の検知
  • 管理者側からのアプリの配信
  • パスワードの設定・変更・削除
  • ネットワーク接続の制限
  • アプリのインストールやカメラ機能の制限
  • 位置情報の確認

あんしんマネージャーでは、従業員の使用する法人携帯の利用を一元的に把握し、管理することが可能です。対象となるのはスマートフォン、タブレットだけでなく、Windows10が内蔵された端末も含まれます。社内の端末利用状況よっては、あらゆる社内の端末を管理できるため、コストと時間の削減にもなります。

1回線ごとに月額275円、Windows版は440円で利用できるので、社内の端末にドコモを利用している場合は、私的利用防止のために利用してみてください。

ドコモ公式HP:https://www.nttdocomo.co.jp/biz/charge/

Y!mobile

Y!mobileは安く利用するならシンプルSプラン、余裕をもって利用するならシンプルMプランがおすすめです。格安SIM会社であるY!mobileは、利用料金が大手キャリアに比べると安く、シンプルSプランなら月額1,980円、シンプルMプランなら2,980円で利用可能です。

格安SIM会社は大手キャリアに比べると、MDMなどのサービス面で弱い部分はあります。しかし、Y!mobileではソフトバンクと同様の「ビジネス・コンシェルデバイスマネジメント」を提供しています。サービス内容もソフトバンクのものと同様で、リモートでの各端末の一元管理を可能にしています。

注意したいのは、ワイモバイル店頭ではこのサービスの受付をしていないので、相談の際は担当営業者またはワイモバイル法人ダイレクトに相談する必要があることです。

Y!mobile公式HP:https://www.ymobile.jp/biz/sp/smartphone2l/

まとめ:法人携帯導入前に各キャリアで比較検討しよう

法人携帯の私的利用防止はどんな問題があるのか、私的利用防止の対策について紹介してきました。

私的利用防止には、キャリアごとに提供しているMDMサービスを利用する方法もありますが、まずは法人携帯を利用する前に規則をしっかりと作ることが大切です。また、従業員への利用規則の周知徹底も忘れないでください

規則を作ったうえで、各キャリアにはどのような料金プランがあり、管理サービスがあるのかを徹底的に調査してください。そして、キャリアごとの違いを理解して、その違いを比較検討しましょう。各社にあった最適なキャリアを選ぶことが、業務効率向上とコスト削減、そして私的利用防止対策にも繋がります。

この記事を参考にして、最適なキャリア選びを進めてください。

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Wiz Cloud編集部

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