「企業がICTを取り入れるメリットは?」
ICTとは、情報技術(IT)を「通信技術」によって伝達・共有・活用する仕組みです。
しかし、「IoTやITとの違いは?」「DXとICTの関係は?」など、疑問を抱いている方も少なくないはずです。
本記事では、ICTの定義や社会的役割、企業に導入するメリットなどを解説します。
目次
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ICTとは?基礎から理解する
ICTの定義
ICTとは、「情報」と「通信」の技術を組み合わせた概念で、 コンピュータやインターネット、電話、無線などを使って情報を伝達・共有・活用する仕組み の総称です。
単なるIT(情報技術)に留まらず、人や組織が相互に情報をやり取りし、価値を生み出す点が特徴といえます。
たとえば、クラウド会議システムやビジネスチャット、遠隔医療の仕組みもすべてICTの一部です。
このように、ICTは「情報を使ってコミュニケーションを円滑にする技術群」として、現代のビジネスや社会に不可欠な存在となっています。
※ICTは、Information and Communication Technology):情報通信技術の略称。ITとの違い(技術自体 vs 通信を伴う活用)
IT(Information Technology)は、主に「情報を扱う技術」そのもの を指します。一方、 ICTは、ITに「情報と情報、情報と人をつなぐ通信」を加えた概念です。
たとえば、パソコンでの文書作成はITの範囲ですが、それをメールやクラウドで共有して活用するのはICTです。
このように、ICTは情報を「伝える・つなぐ」仕組みを含むため、ITよりも広範で応用的な概念であると言えます。
ICTとIoTの違い
ICTは、情報通信技術全般を指す包括的な概念です。一方、 IoTは、そのICTの中の特定の一分野であり、「モノ」がインターネットにつながることに特化した技術 です。
例えば、家電製品、産業機械、自動車、センサーなどがインターネットにつながることで、遠隔操作、状態監視、データ収集などが可能になり、新たなサービスや効率化が実現されます。
ICTは情報通信技術の「全体像」であり、IoTはその全体像の中の「特定の応用分野」である、と理解すると分かりやすいでしょう。
ICTとIoT・DX・AI・5Gとの関係と位置づけ
ICTは、さまざまな先端技術と密接に関係しています。
- IoT:センサーなどで取得した情報をICTを通じてクラウドへ送信し、AIがそのデータを解析する構造
- DX:は、ICTを活用して業務やビジネスモデルを根本から変革する取り組み
- 5G通信:ICTインフラの一つであり、高速・大容量な情報伝達を可能にします。
このようにICTは、これら最新技術をつなぎ、活用する土台として機能しているのです。
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市場・社会背景(人手不足、テレワーク、Society 5.0)
現代社会では、 少子高齢化による人手不足や働き方改革の流れにより、ICTの重要性が急速に高まっています 。
特にコロナ禍以降、テレワークや遠隔教育など非対面型の業務スタイルが普及し、それを支えるICTの導入が不可欠となりました。
また、日本政府が掲げる「Society 5.0」では、ICTを活用して人とモノをつなげ、持続可能な社会を実現することが目標とされています。
ICT市場の成長動向と政府戦略
ICT市場は、世界的に見ても右肩上がりの成長を続けています。 特にクラウド、5G、AIとの連携が進み、企業の競争力強化に不可欠な投資領域とされています 。
日本国内でも、総務省や経済産業省がICT利活用を推進しており、地方創生や行政サービスのデジタル化を後押ししています。
たとえば「デジタル田園都市国家構想」では、地域の課題解決にICTを活用する取り組みが各地で進行中です。
このように、政府の後押しもあり、ICTは今後ますます経営戦略に組み込むべき分野といえるでしょう。
経営者目線でのICT導入メリット
- 業務効率化・生産性向上
- コミュニケーション活性化
- 顧客体験向上/競争力強化
- BCP(事業継続計画)/リスクマネジメント対応
業務効率化・生産性向上
ICT導入の最大のメリットのひとつは、業務効率の大幅な向上です。
紙ベースでの作業や電話対応など、 アナログな業務をデジタル化すれば、時間や手間を削減できます 。
たとえば、クラウド上で資料を共有すれば、複数人が同時に編集でき、情報の行き違いも防げます。
また、RPA(定型業務の自動化ツール)を活用すれば、人手不足を補いながら生産性を高めることが可能です。
こうした効率化は、コスト削減と従業員満足の両立にもつながり、経営改善に直結します。
コミュニケーション活性化(社内外の連携改善)
ICTは社内外のコミュニケーションを円滑にするツールとしても効果的です。従業員同士の情報共有はもちろん、顧客や取引先との連絡手段も多様化・高速化しています。
たとえば、 ビジネスチャットツールやWeb会議システムを導入すれば、リアルタイムでのやり取りが可能に なり、意思決定のスピードが格段に上がります。
さらに、履歴が残ることで、情報の可視化とトラブル防止にも役立ちます。
このように、ICTは業務の潤滑油として、連携強化に貢献する技術といえます。
顧客体験向上/競争力強化
ICTを活用することで、顧客に対するサービスの質を高め、企業の競争力を強化できます。
たとえば、 CRM(顧客管理システム)を使えば、一人ひとりの顧客に最適な対応が可能となり、満足度が向上 します。
また、ECサイトやチャットボットなど、顧客接点をデジタル化することで、24時間の対応やパーソナライズも実現可能です。
これによりリピーター獲得や売上拡大が期待できるため、単なる業務効率化だけでなく、成長戦略の鍵にもなります。
BCP(事業継続計画)/リスクマネジメント対応
ICTの導入は、災害や感染症のような緊急時にも事業を止めないための強力な手段となります。
これを「BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)」と呼び、ICTの活用がその実行性を高めます。
たとえば、 データをクラウドに保存しておけば、拠点が被災しても業務を別の場所から再開できます 。
また、遠隔勤務ができる体制を整えておけば、出社できない状況でも業務を継続可能です。
このように、ICTは経営リスクを最小限に抑える備えとしても大きな価値があります。
経営者でも実践できるICT導入ステップ
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STEP.1
現状分析(ボトルネック洗い出し)
ICT導入の第一歩は、現状を正しく把握することです。いきなり新しいツールを導入しても、課題が不明確では効果は限定的になります。
そこで重要なのが「業務の棚卸し」です。 どの業務が時間を要しているのか、どの作業でミスが発生しやすいかを可視化し、改善の余地が大きい部分を見極め ます。
たとえば、日報作成や受発注業務などが手作業になっていれば、それらがICT化の対象となります。このように、課題を整理することが成功の鍵を握ります。
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STEP.2
目的とKPIの設定
ICTを導入する際は、「なぜ導入するのか」という目的を明確にし、それに合ったKPI(重要業績評価指標)を設定することが不可欠です。
目的が曖昧なままだと、効果の測定ができず、社内の理解も得られにくくなります 。
たとえば「業務時間を月10時間削減する」や「問い合わせ対応時間を30%短縮する」など、定量的な目標を立てることで、導入後の評価もしやすくなります。
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STEP.3
ツールの選定と段階的な導入
ICTツールを導入する際は、いきなり全社展開せず、 まずは一部の部門や業務で試験導入するのがおすすめ です。
特に、SaaS(クラウド型のサービス)は初期投資が少なく、使い勝手を確認しながら導入を進めやすい点がメリットです。
たとえば、チャットツールの「Slack」やWeb会議の「Zoom」などは、無料プランで始められ、効果を確認してから有料版に移行できます。
このように、小さく始めて成果を確認しながら、段階的に広げていく方法が失敗のリスクを抑えます。
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STEP.4
教育・運用体制整備(ITリテラシー、ガバナンス)
ICTを効果的に活用するには、ツール導入だけでなく、使う人材の教育や体制整備が不可欠です。
社員一人ひとりのITリテラシーを底上げしなければ、せっかくの仕組みも使いこなせず成果が出ません。
また、情報管理ルールや責任の所在を明確にする「ITガバナンス」も重要です。
たとえば、 操作研修やマニュアル整備、情報共有のルールづくりなどを通じて、ICTの定着を図ります 。
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STEP.5
効果測定と継続改善
ICTを導入した後は、効果を数値で検証し、必要に応じて改善を重ねていくことが大切です。
導入直後は期待通りの成果が出ないこともありますが、 原因を分析し、ツールの見直しや業務プロセスの再設計を行うことで、着実に効果を高められます 。
たとえば、「作業時間が目標の半分しか削減できていない」と分かれば、その理由を現場にヒアリングし、機能の使い方やフローを見直します。
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製造・物流(スマート工場、IoTセンシング)
製造業や物流業界では、 ICTを活用することで現場の「見える化」と「自動化」が進んでいます 。
- 製造
工場の機械にセンサーを取り付けて稼働状況をリアルタイムに把握。故障の予兆をつかみ、トラブルを未然に防止。 - 物流業
配送車両の位置情報を追跡することで、配達の効率を向上。
これらはすべて、IoTやクラウドを活用したICTシステムによって実現されています。上記のような実用により、コスト削減や生産性向上が図れるのです。
小売・サービス(EC、店舗DX)
小売やサービス業では、 ICTの導入が顧客体験の向上につながります 。
- ECサイト・ネット販売
顧客データを分析することで、一人ひとりに合わせた商品提案が可能。 - 実店舗
セルフレジやキャッシュレス決済の導入によって、待ち時間の短縮や人手不足の解消が可能。
来店状況を可視化するAIカメラを使えば、販促や人員配置の最適化にも。
このように、ICTは販売戦略にも大きな影響を与える技術です。
教育・医療・介護(遠隔会議、オンライン診療、eラーニング)
教育や医療・介護分野でも、ICTの活用が広がっています。
- 学校
eラーニングやオンライン授業が一般的となり、地域や時間にとらわれず学習が可能に。 - 医療現場
オンライン診療が拡大し、通院が困難な患者への対応が進んでいます。 - 介護分野
見守りセンサーや記録システムの導入により、スタッフの負担軽減と安全管理が両立されています。
このように、ICTは人材不足や地域格差といった社会課題の解決にも寄与しています。
地方公共・防災(行政DX、災害対策)
地方自治体においても、ICTを活用した行政DX(デジタルトランスフォーメーション)が進んでいます。
オンラインでの各種手続きや相談対応、住民向けの情報発信ツールの導入 により、住民サービスの向上と業務効率化を同時に実現しています。
また、防災分野では、災害発生時にSNSやアプリを通じて迅速な避難情報を提供したり、河川や地盤のセンサーで危険を察知する仕組みも活用されています。
このように、ICTは公共の安全・安心にも欠かせない存在です。
最新トレンドとこれから注目すべきICT技術
AI・機械学習の活用
ICTとAI(人工知能)の組み合わせは、今後のビジネスや社会における変革を加速させる重要な要素です。
AIは大量のデータからパターンを見つけ出し、予測や判断を自動で行う仕組みで、 業務の効率化や人手不足の解消に役立ちます 。
たとえば、コールセンターではAIが問い合わせ内容を分類し、自動応答で対応する事例も増えています。
また、需要予測や在庫管理にもAIが活用されており、経営の意思決定をサポートするツールとしての期待が高まっています。
5G/6G通信とエッジコンピューティング
通信技術の進化もICTを大きく進化させる要因です。5Gは従来の通信と比べて高速・大容量・低遅延という特長があり、遠隔操作や高精細な映像配信を可能にします。
さらに、 次世代の6Gでは超低消費電力や超高信頼性も視野に入っています 。
また、エッジコンピューティングという技術を使えば、データをクラウドに送る前に端末側で処理でき、通信の負荷を減らしながらリアルタイム性を高められます。
これらの進化は、ICT活用の幅を一層広げていくと考えられます。

クラウドネイティブ+サイバーセキュリティ
現代のICT環境では「クラウドネイティブ」と呼ばれる考え方が重要視されています。
これは クラウド環境を前提にしたシステム設計を行うことで、柔軟でスピーディーな開発・運用を可能にする ものです。
しかし、利便性が高まる一方で、情報漏洩や不正アクセスといったリスクも増加しています。そのため、セキュリティ対策もセットで考えることが不可欠です。
ID管理の強化や多要素認証、通信の暗号化など、ICT導入時にはセキュリティの視点を常に意識する必要があります。
Society 5.0に向けた展望
日本政府が掲げる「Society 5.0」は、 ICTやAI、IoTを活用して経済成長と社会課題の解決を両立する未来像 です。
従来の情報社会(Society 4.0)から一歩進み、人間中心の社会を目指す点が特徴です。
たとえば、スマートシティ構想では、交通・医療・教育・エネルギーなど、あらゆる分野でICTが連携し、市民の生活をより快適で持続可能なものに変えていきます。
このように、ICTは社会全体の構造を変える力を持つ重要な技術基盤と位置づけられています。
ICT化でよくある失敗パターンと対策
- 現場不参加・一過性プロジェクト化
- ITリテラシー格差の放置
- ROIが測れず投資が続かない
- セキュリティインシデント
現場不参加・一過性プロジェクト化
ICT導入でよくある失敗の一つが、現場の声を無視して経営層だけで導入を決めてしまうケースです。
このような トップダウン型では、現場が納得せず活用が進まず、結局ツールが放置されてしまう ことがあります。
たとえば、業務フローに合わないシステムを導入し、かえって手間が増えるケースも見られます。
こうした失敗を防ぐには、導入前から現場の意見を聞き、実際の業務にフィットする形で進めることが重要です。
ICTは現場と一体で進めてこそ機能します。
ITリテラシー格差の放置
導入したツールを活用できるかどうかは、社員のITリテラシーに大きく左右されます。
使いこなせない社員が多いままでは、活用が進まず「宝の持ち腐れ」となる恐れ があります。
特に、年齢や職種によってリテラシーの差が出やすいため、全社的な教育が必要です。
たとえば、操作研修やQ&Aサポート体制を整え、誰でも安心して使える環境を用意することが重要です。ICT導入は技術だけでなく、実際に使う人への配慮が成功のポイントになります。
ROIが測れず投資が続かない
ICT導入には一定のコストがかかりますが、 費用対効果(ROI)を明確にしないまま進めると、「効果が見えない」と判断され、継続的な投資が難しくなるリスク があります。
たとえば、導入後に定量的な成果指標が設定されていなければ、改善の方向性も不明確になりがちです。
導入前にKPIを設け、定期的に効果を測定することで、経営層の納得感を得ることができるでしょう
セキュリティインシデント
ICTを導入する際に見落としがちなのが、セキュリティ対策や関連法令への対応です。
たとえば、個人情報の取り扱いや外部クラウドの利用に関して、 社内ルールが曖昧なままだと、情報漏洩など重大なトラブルにつながる恐れがあります 。
また、セキュリティインシデントが発生すると信頼を失い、企業のブランド価値にも傷がつきます。
そのため、導入と同時にガイドラインやアクセス権限の整備を進め、安心・安全な運用体制を構築する必要があります。
ICT化を考える上で押さえておきたいポイント
ICTはDXの基盤であり、通信を重視する視点が重要
ICTは、情報技術(IT)に通信機能を加えたもので、DX(デジタルトランスフォーメーション)を支える基盤となる存在です。
情報を「つなぐ」「共有する」機能こそが、業務や組織の変革を推進する力 になります。
クラウドやオンライン会議、IoTなど、現代の業務に不可欠な仕組みの多くは、ICTによって成り立っているのです。
単なるITツール導入ではなく、通信を軸にした全体最適の視点が、真のDX実現につながります。
まずは“できる範囲で小さく試す”から始める
ICT導入にあたっては、 「最初から完璧を目指す」のではなく、「できる範囲で小さく始める」 ことが成功の近道です。
すべてを一度に変えようとすると、現場が混乱したり、導入コストが膨らんだりして、かえって逆効果になることがあります。
たとえば、社内の一部署からチャットツールを試すなど、小規模な試行で成果を確認しながら段階的に広げていく方法が効果的です。
このような段階的導入は、成功体験を積み重ねながら全社展開を進めるうえで非常に有効です。
社内文化を変革する長期的視野がカギ
ICTはあくまで手段であり、真の目的は「働き方や組織の文化を変えること」にあります。
どれだけ高性能なツールを導入しても、社員が変化を受け入れなければ、その効果は限定的です。
そのため、 経営層がビジョンを明確に示し、現場と対話しながら共に変革を進める姿勢が重要 になります。
また、変化には時間がかかるため、短期的な成果に一喜一憂せず、長期的な視野で取り組むことが成功への鍵となるでしょう。
まとめ:ICTを正しく理解し、経営の成長エンジンに
ICTとは、情報と通信を活用して業務や社会を効率化・高度化する技術の総称です。
ITとの違いやDX・AIとの関係を理解し、目的に応じた導入と活用が求められます。
まずは現状把握から小さく試し、段階的に社内へ浸透させていくことが成功の鍵です。
また、ICTはツール導入にとどまらず、働き方や組織文化の改革にもつながります。
経営者こそがその可能性を正しく理解し、長期的な視野で活用していくことが、変化の時代を生き抜く力になります。
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この記事を書いたライター
Wiz Cloud編集部
WizCloud編集部メンバーが執筆・更新しています。 Web関連、デジタル関連の最新情報から、店舗やオフィスの問題解決に使えるノウハウまでわかりやすくご紹介します!