「会社はどうやって作るの?」
独立して開業するには「会社を設立する」方法と「個人事業主で開業する」という方法の2つがあります。また、最初は個人事業主として開業し、軌道に乗ったタイミングで法人化するケースも少なくありません。
しかし、「会社設立と個人事業主はどちらが良いのか?」「会社設立の手続き方法が分からない」「法人化しない個人事業主のメリットが知りたい」という疑問を抱く方も多いでしょう。
今回は、会社設立と個人事業主を徹底比較!メリット・デメリットや会社設立の方法をご紹介します。
起業するなら会社設立(株式会社・合同会社)と個人事業主どっちがいい?
会社設立とは?
会社設立とは、新規で法人企業を設立することです。既存の事業を引き継ぐのではなく、基本的に一から新しい事業をスタートさせます。なお、個人事業主として事業を行っている人が法人を立ち上げて既存の事業を継続することを「法人化」といいます。
法人化は、顧客・預金・貸付金・負債なども事業と一緒に引き継がれるため、会社設立とはスタート時の条件が異なります。
個人事業主とは?
個人事業主とは、法人を設立せずに個人で事業を営む形態です。税務署に「開業届」を提出して事業開始の申請をすれば、個人事業主として独立したとみなされます。
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「フリーランス」と「個人事業主」の違いは?
- 「フリーランス」とは、開業届を提出せずに、個人として仕事を請け負う働き方です。
開業届を提出しない点で、個人事業主と異なりますが、税務上では個人事業主と同じくくりにされます。
会社設立(株式会社・合同会社)と個人事業主の違い
手続きの違い
会社設立(法人)と個人事業主は、開業時の手続きが異なります。個人事業主として事業を始める場合は、税務署に開業届を提出するだけで手続きが完了します。
一方、会社設立の場合は、開業時に法人登記をします。提出する書類も多いため、個人事業主よりも手続きが煩雑です。
税金面の違い
会社設立(法人)と個人事業主は、課せられる税金の種類が異なります。個人事業主 | 法人 |
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所得税 | 法人税 |
個人住民税 | 法人住民税 |
消費税 | 消費税 |
個人事業税 | 法人事業税 |
個人事業主に課せられる所得税は累進課税なので、儲けが大きくなるほど税率が高く、控除は少なくなります。
一方、法人税は所得税に比べて税率が緩やかで、最大税率も23.2%です。
ただ、ただ、赤字になった場合、個人事業主は所得税や個人住民税が免除されますが、法人の場合は必ず法人税が発生します。
経費にできる範囲の違い
会社設立(法人)と個人事業主は、経費として計上できる項目の範囲が異なります。個人事業主は、経費計上できる額に限度がないものの、極端に金額が大きいと税務調査の対象になる可能性があります。
一方、法人は個人事業主が計上できる経費に加え、給与や賞与、退職金なども経費として計上することが可能なので、個人事業主と比べて節税効果が高くなります。
起業にかかる費用の違い
法人の場合は、会社形態に応じて法定費用が必要な一方、個人事業主の場合は、起業時に法定費用が発生しないため事業にかかる費用のみで開業できます。法人で会社を設立すると、会社印の購入や社会保険への加入の他、資本金の準備も必要になるので、個人事業主にくらべて開業費用が高額になりがちです。
社会的信用面での違い
法人は、会社法などの法律に基づいてより厳格に運営されるため、社会的信用を得やすいのが特徴です。たとえば、財務面の透明性が高い法人企業は銀行のプロパー融資において、審査に通りやすいといわれています。一方、個人事業主は法人と比べて社会的信用度が低く、個人事業主との取引を避ける企業もあるようです。
会社設立と個人事業主のメリット・デメリットを比較
会社設立のメリット
社会的な信用を得やすい
会社を設立することで、商号や住所、資本金といった情報が登記されるため、社会的な信用を得やすいというメリットがあります。大手企業の中には、実績があっても個人事業主とは取引しない会社もあり、肩書や名刺に「法人」とあるだけで、取引先に与える印象が異なってきます。
さらに、求職者も安定的な雇用を求めて、法人での雇用を求める傾向があるため、優秀な人材を雇用したい場合にも会社設立のほうが有利です。
これらの理由から、今後取引先の拡大や売上増加、事業拡大を目指す場合は、会社設立をおすすめします。
節税面でのメリットが大きい
法人に課される法人税と個人事業主に課される所得税は計算方法が異なり、同じ利益でも税額が変わってくるため、会社を設立すると、税金面で有利になる可能性があります。所得税は、利益に応じて税率が上がる一方、法人税は利益が増えても原則一定税率なので、年間の利益が500万を超える場合は法人が有利になるとされます。
また、法人にのみ認められている節税方法があることからも、会社設立をした方が税金面で優遇が得られます。
税金面で法人が有利になるケース |
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資金調達しやすくなる
会社設立をすることで社会的な信用が高くなるため、融資を使った資金調達面もしやすくなります。法人は、損益計算書と貸借対照表の作成義務があり、財産管理が厳格な分、金融機関も融資判断しやすいため、融資交渉も個人事業主と比べて有利です。
さらに、株式の増資など、法人ならではの資金調達方法もあるため、財政基盤を強化しやすくなります。
決算日を自由に設定できる
会社設立をすることで、決算日を自由に決められるというメリットがあります。個人事業主の場合、決算月が法律によって決められているため、繫忙期とタイミングが重なってキャパオーバーになってしまうケースもしばしば見られます。
一方、法人は繁忙期と決算事務が重ならないように調整することで、1年間を通して業務を平準化することが可能です。
事業承継がしやすい
会社設立をしておくことで事業承継がしやすくなる点も、メリットとして挙げられます。個人事業主の場合、事業主が死亡すると、個人名義の預金口座が一時的に凍結されて支払が困難になるなど、事業に支障が出る可能性があります。
一方、法人であれば、代表者が亡くなった場合も銀行口座が凍結されないため、滞りなく事業を継続することが可能です。
倒産時の責任が有限である
法人の場合、事業の責任や借金返済の責任は、それぞれの出資割合に応じた有限責任となっているため、倒産した際のリスクが少ないというメリットがあります。一方個人事業主の場合は、事業を通して発生した債務を事業主が全て負担することになるため、個人資産が差押えされる可能性があります。
ただし、法人企業においても、社長が個人保証した場合は無限責任になります。特に、中小企業では融資に当たって個人保証を求められるケースも多いので注意しましょう。
会社設立のデメリット
設立と維持にコストがかかる
会社を設立するには定款の作成や登記申請が必要なので、開業届の提出だけで手続きが完了する個人事業主よりも開業時に手間やコストがかかります。特に、定款認証費用と登録免許税だけで20万円ほど費用が発生するだけでなく、登録等の手続きの関係で開業までに2~4週間ほどかかることも多いです。
また、赤字であっても最低7万円前後の住民税均等割りが発生するなど、設立後の維持にも様々なコストが必要になります。
社会保険加入が義務付けられる
会社を設立すると、社員が自分ひとりの場合も「健康保険」と「厚生年金保険」への加入義務が発生します。これらの社会保険は、「国民健康保険」や「国民年金」と比べて保険料が高額なので、個人事業主よりも負担が大きくなります。
特に、従業員を雇う場合は、社会保険料にかかる負担を事前にシミュレーションしておくのがおすすめです。
事務負担が増加する
法人は、個人事業主に比べて事務負担が大きいというデメリットがあります。たとえば、法人は個人事業主よりも厳密な会計ルールに従った会計処理が必要となります。また、税金の申告についても、法人税の申告は所得税に比べて複雑なので、税理士に依頼するのが一般的です。
その他、法人の場合は社会保険や労働保険の手続きや株主総会の開催、役員変更登記などの手続も必要となるため、個人事業主に比べて事務負担が煩雑になりがちです。
個人事業主のメリット
個人ですぐに始められる
個人事業主は、開業にかかるコストや手続き面での負担が少なく、手軽にスタートできる点がメリットです。個人事業主であれば登記申請も不要で、開業届を提出すれば手続きが完了します。
また、開業届の提出には手数料などが発生しないため、費用面においても比較的起業しやすい形態です。
会計処理がしやすい
個人事業主は、法人と比べて会計処理のルールが厳しくないため、会計業務の負担も少なくて済みます。特に、自分一人で起業する場合、会計業務が煩雑だとリソース不足になってしまう可能性もあるため、経営管理に慣れるまでは個人事業主として事業を行うのもおすすめです。
利益が少ない時には税金の負担も小さい
個人事業主が支払う所得税は累進課税なので、利益が小さいうちは税負担も少ない点がメリットです。また、個人事業主で赤字経営となってしまった場合は所得税や個人住民税が免除されるため、赤字でも一定の費用負担がある法人と比べて税金面で有利になる可能性があります。
個人事業主のデメリット
社会的な信用が低い
個人事業主は、登記や会計資料の公開義務がないため、法人と比べて社会的信用が得にくいというデメリットがあります。中には、実績にかかわらず個人事業主とは取引をしない会社もあるため、事業運営や利益の拡大に差し支える可能性がある点には注意しましょう。
また、求職者の多くは安定していて社会保険がある雇用先を希望する傾向にあるため、個人事業主は人材の確保において不利になる可能性があります。
以上の理由から、社会的な信用が売上に直結しやすい場合や、今後取引先の拡大・優柔な人材の採用などを想定する場合は会社設立しておくのがベターです。
資金調達しにくい
個人事業主は、法人と比べて社会的な信用が低いため、「金融機関からの融資が受けにくい」「クレジットの審査が通りにくい」といったデメリットも挙げられます。また、法人と違って「出資を受ける」という選択肢もないので、資金調達がしにくい点には注意しましょう。
利益が増えると税負担も大きくなる
個人事業主に課される所得税は超過累進課税なので、利益が増えた分税負担も大きくなってしまうというデメリットがあります。一般的に、年間の利益が500万を超える場合は法人の方が有利になるといわれているため、個人事業主としてスタートした後、利益が増えた段階で会社を設立するのがおすすめです。
無限責任で個人負担が大きい
個人事業主は法人と違って無限責任なので、事業を通して発生した債務は事業主が全て負担しなければなりません。負債を返済できない場合、個人資産が差押えられたり、自己破産に追い込まれる可能性もあるため、事業で失敗した際のリスクが大きいです。
個人事業主として事業を展開する場合は、事業者向けの保険に加入しておくなど、万が一の事態に備えておくことをおすすめします。
会社設立の方法
会社を設立する際には株式会社と合同会社の2種類がある
株式会社
株式会社とは、株式を発行して出資を募り、その資本金を基に設立された会社を指します。会社の利益が上げれば株価も上昇するため、「配当金」として株主に利益を還元する仕組みです。
反対に、業績が悪ければ株価が下がり、株主から経営陣の責任を追及されることになります。
合同会社
合同会社は、経営者がそれぞれ出資金を持ち寄って設立する会社です。株式会社は、一般的に出資者と経営者が異なりますが、合同会社は経営者と出資者が同じであるという特徴があります。合同会社では、出資者全員が有限責任社員なので、万が一会社が倒産した場合も責任は出資した金額の範囲にとどまります。
ただし、合同会社は株式を発行できないため、株式による出資を検討する場合は株式会社として起業しておくのが無難です。
会社設立に必要な手続き
会社を設立するには、以下の手続きが必要です。
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会社設立にかかる費用
株式会社を設立する場合の費用は350万円~400万円が目安
株式会社を設立する場合、定款認証・登記にかかる「法定費用」や「資本金」、「専門家への報酬」などが必要となり、起業資金は350万円~400万円が目安です。株式会社の起業資金一覧 | |
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内訳 | 金額の目安 |
法定費用 | 約25万円 |
資本金 | 約300万円 |
専門家への報酬 | 約20~30万円 |
合計 | 約350万円~400万円 |
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法定費用
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内訳 金額の目安 登録免許税 15万円または資本金の0.7%の額
(どちらか高い方)謄本手数料 約2,000円(1ページ250円) 公証人の定款認証手数料 約5万円 定款に貼る印紙代 4万円(電子認証の場合は不要) 合計 約25万円
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資本金
- 株式会社の場合は「資本金」を準備する必要があり、原則1円からでも設立は可能ですが、会社の運営や社会的信用のことを考えると、300万円程度は用意しておくのがベターです。
一般的に、「資本金」は運転資金として考えるケースが多いうえ、資金調達などを検討している場合は銀行からの信用を得るためにもまとまった金額が必要だといわれています。
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専門家への報酬
- 会社設立にあたって税理士や司法書士などの専門家に依頼をした場合、報酬として20~30万円程度のコストが発生するので注意が必要です。
なお、税理士との顧問契約を行う場合は、年間顧問料として50万円ほど費用が発生するので、見積もりを取る際に留意しておきましょう。
合同会社を設立する場合の費用は80万円~300万円が目安
合同会社は、出資者の少ない個人経営に適した会社形態で、株式会社の設立に必須な「公証人による定款認証」が不要なので、起業資金もやや安くなります。合同会社の起業資金一覧 | |
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内訳 | 金額の目安 |
法定費用 | 約10万円 |
資本金 | 約50万円~300万円 |
専門家への報酬 | 約20~30万円 |
合計 | 約80万円~300万円 |
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法定費用
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内訳 金額の目安 登録免許税 6万円または資本金の0.7%の額
(どちらか高い方)謄本手数料 約2,000円(1ページ250円) 定款に貼る印紙代 4万円(電子認証の場合は不要) 合計 約10万円
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資本金
- 合同会社の資本金は、事業内容によっても様々ですが、50万円~300万円が相場です。
株式会社と同様に、1円からでも設立自体は可能ですが、運転資金や銀行からの融資、社会的な信用などを考慮すると、最低でも50万円程度は用意しておきたいところです。
会社設立の流れ
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STEP.1
起業する領域を決める
起業する際は、第一に消費者の課題やニーズをとらえたうえで、事業を展開する領域を決めねばなりません。
マーケットを分析したうえで起業アイデアを洗い出し、自身が参入する分野や既存サービスとの差別化などを検討しましょう。
この際、「他の人も似たような事業を思いつく可能性がある」という視点をもって自分のアイデアを検証し、「他人とは全く異なるアプローチ」を意識して差別化を図ることが重要です。 -
STEP.2
会社概要を決める
起業する領域や事業内容が決まったら、会社名や資本金額など会社の概要を決めます。
会社概要の決め方を誤ると、設立後の運営で思わぬトラブルを招く可能性があるため、慎重に作成しましょう。
会社設立時に決めておきたい事項 ・会社名
・本店所在地
・資本金
・設立日
・会計年度
・事業目的
・出資者と出資金額
・役員の構成
・1株あたりの金額
・発行可能株式総数
・取締役会の有無 -
STEP.3
印鑑の作成
会社名が決定したら、会社の実印を作成します。会社設立後には、銀行の届け出に使う銀行印や、請求書などに使う角印が必要になるため、3本セットで作っておくと便利です。
印鑑の購入費用は、ハンコの材質によっても異なりますが、柘植で5,000円~1万円程度、黒水牛で1万円~2万円程度が目安となります。
なるべく費用を抑えたい場合は、インターネットのハンコ屋さんに発注するのもおすすめです。 -
STEP.4
出資金の払込・設立関係書類の作成
次に、資本金の払い込みをします。1人会社の場合は自分の口座に、発起人が複数人の場合は代表者を1人選び、その人が保有する個人名義の銀行口座に出資金を払い込みましょう。
また、会社設立の際は、公証人役場と法務局に書類を提出する必要があります。提出する順番は決まっていますが、書類作成は同時に進めることが可能なので、設立準備をスムーズに進めるためにも、まとめて作成しておくのがおすすめです。
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STEP.5
公証人役場で定款を認証
STEP.1で決めた内容をもとに定款を作成し、公証人役場で認証を受けます。
定款は、正しい形式であることに加え、内容が自分の目指す会社経営と合致しているかどうかも重要なので、しっかりと確認しましょう。
なお、公証人役場での費用は、「印紙代」(一律40,000円)と「定款認証の費用」(資本金の額に応じて変動)の2種類です。
資本金の金額 定款認証の費用 100万円未満 30,000円 100万円以上300万円未満 40,000円 300万円以上 50,000円 -
STEP.6
登記申請
最後に、認証を受けた定款や登記申請書などを法務局に提出します。この登記申請書を提出した日が会社の設立日となります。
会社設立を決める際に検討したいポイント
事業拡大を望むかどうか?
会社設立を検討する際は、今後の事業ビジョンが重要な判断ポイントとなります。将来的に利益の拡大や事業規模の拡大を目指す場合は、法人として起業するのがおすすめです。社会的な信用を得やすい法人企業は、個人事業主よりも資金調達をしやすく、取引先の拡大にも有利です。また、利益が増えるほど、税制面でのメリットも大きくなります。
さらに、事業拡大にあたって従業員を採用する場合も、雇用が安定している法人の方が優秀な人材を確保しやすいです。
税金面でどちらが有利か?
法人に課される「法人税」と個人事業主に課される「所得税」はそれぞれ税率が違うため、年間の収益を踏まえて有利な方を選ぶとよいでしょう。一般的に、年間の利益が500万円以上見込める場合は、法人が有利になるとされています。
起業直後に500万円の所得が見込めない場合は、一度個人事業主としてスタートした後、利益が増えた段階で法人化するのがおすすめです。
資本金をいくら用意できるか?
会社設立を検討する場合、いくらくらい資本金を用意できるかも判断基準の一つです。新会社法により、資本金1円からでも会社設立ができるようになりましたが、「開業後の運転資金」や「社会的な信用」など現実的なことを考えると、ある程度まとまった額の資本金を用意する必要があります。
もし、十分な資本金が用意できない場合は、一度個人事業主として起業し、ある程度資金が貯まってから法人化するのがベターです。
資金調達はどうするか?
会社設立を検討する際は、開業資金の調達方法も判断基準となります。個人で金融機関から融資を受けられる場合は個人事業主でも問題ありませんが、株式などの出資で資金調達をしたい場合は法人を設立しなければなりません。
また、金融機関によっては個人事業主への融資をしていないケースもあるので、事前に確認しておきましょう。
社会的信用が必要になるか?
業界や事業内容によっては、法人格の肩書があることでビジネスが有利になるケースもあります。取引先や顧客の獲得において、「株式会社」であるメリットが大きい場合は、会社設立しておくのがベターです。また、個人事業主という理由で、事業の内容によっては許認可が下りなかったり、テナントやオフィス、業務用リースの契約ができなかったりする可能性もあります。
会社設立を検討する際は、「個人事業主の形態をとることで事業に支障が出ないか」よく考えましょう。
会社設立をする際に注意したいポイント
税金面での失敗例
会社を設立する際は、「売上予測を見誤り、税金面で損をしてしまう」ことのないように注意しましょう。具体的には、「節税目的で会社組織にしたものの、利益が予想を下回ったため会社設立のメリットをあまり感じられなかった」「個人事業主として起業したが、予想以上に利益が出て所得税が増えてしまった」といった事例がしばしば見られます。
このような失敗を避けるためにも、起業する際は同じエリアで事業を行っている同業者の状況などを十分リサーチし、客観的に売り上げ予測を立てましょう。
利益配分での失敗例
複数人で会社を設立する場合は、利益配分に関するトラブルに注意しましょう。家族経営で会社を設立する場合は問題に発展しにくいですが、他人と共同で事業を始める場合は十分に話し合いを重ねる必要があります。
実際に利益を配分する段階で協議すると、なかなか話がまとまらない可能性もあるので、起業準備の段階で利益配分のルールをある程度決めておくのがベターです。
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定款認証手数料の改定
令和4年1月より、定款認証手数料が改定されたことで、従来よりも少ない費用で手続きをとれる事業者が増えました。改定前は、手数料が一律5万円でしたが、改定後は資本金に応じて金額が決まるようになったため、資本金が300万円未満の場合は以前よりも安く定款認証を受けることが可能です。
資本金の金額 | 定款認証の手数料 |
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100万円未満 | 3万円 |
100万円以上300万円未満 | 4万円 |
300万円以上 | 5万円 |
代表者住所がインターネットで非開示に
令和4年9月1日より、インターネットで登記情報を閲覧できるサービスが一部改正され、代表者の住所が非開示となりました。この改正により、経営者の個人情報保護が強化されたため、プライバシーの観点から登記を躊躇していた方でも、以前と比べて会社を設立しやすくなっています。
ただし、法務局で登記簿謄本を取得する場合は、従来通り代表者住所が記載されているので注意しましょう。なお、DV等の事情がある場合は、登記官に申し出ることで法務局での閲覧も非開示にできます。
個人事業主が法人化したい場合
法人化とは
法人化とは、個人事業主として事業を展開している経営者が会社を立ち上げ、法人としての経営に切り替えることを指します。法人化した場合、ぞれまでの事業内容や顧客、預金、貸付金、負債などはそのまま引き継がれます。
法人化するタイミングは所得税率で判断
法人化を検討している場合は、税率が上がる所得金額に達したタイミングで会社を設立するのがおすすめです。所得税と法人税はそれぞれ税率が異なるほか、法人と個人事業主では経費として計上できる項目も変わってくるため、年間の所得金額が一定のラインを超えると法人の方が節税効果が高くなるといわれています。
一般的に、年間の利益が500万円を超える場合は法人の方が税金面で有利になるといわれているので、収益が安定してきた場合は法人化に向けて準備を始めましょう。
会社設立と個人事業主で迷っている方におすすめの本
らくらく個人事業と株式会社「どっちがトク?」がすべてわかる本(東京シティ税理士事務所 著)
本書は、データに基づいて、個人事業と株式会社経営のどちらが良いか比較している一冊です。
すでに個人事業主として活躍しているフリーランス向けに、法人化を決定するための判断基準がわかりやすく解説されているため、法人化を検討し始めた方におすすめです。
▶詳細はコチラ
個人事業を会社にするメリット・デメリットがぜんぶわかる本(関根俊輔 著)
本書は、法人化のメリットだけでなく、個人事業ならではメリットについても詳しく解説されているので、法人化すべきか決めかねている方に最適の一冊です。
また、法人化を解説している本は、メリットばかりに注目しているものが多いですが、本書はメリットとデメリットが両方解説されているため、法人化するかどうかを客観的に検討したい場合にもおすすめです。
▶詳細はコチラ
会社設立・個人事業主に関するQ&A
A
売上高によって、個人事業主と会社設立のどちらを選ぶべきか変わってきます。
一般的に、年間の利益が500万円を超える場合法人の方が有利とされています。
A
法人化の目安は、年間の利益が500万円を超えるタイミングです。
A
業種や業態が同じであれば、基本的に法人・個人事業主問わず必要な保険は同じです。
ただ、法人の場合は「法人保険」を選ぶ方が万が一の事態に対処しやすい可能性もあるため、留意しておきましょう。
A
個人事業主の場合は「開業届」が必要です。
一方、会社を設立する場合は「定款の認証(公証人役場)」「登記申請(法務局)」「法人設立届出書を提出(税務署)」「健康保険・厚生年金保険加入の手続き(年金事務所)」「給与支払事務所等の開設の届出(税務署)」が必要となります。
A
個人事業主が法人化する場合は、税金面でメリットがあるかどうか税理士に相談するのがおすすめです。
A
別事業であれば、個人事業主と法人経営を掛け持つことは可能です。
ただし、「別事業」という判断は客観的なものでなければならないため、きちんと違いを示せるようにしておきましょう。
まとめ
会社設立は、税金面や社会的な信用面でのメリットが多いため、今後事業を拡大して増収を目指したい場合は法人として起業するのがおすすめです。特に、年間の利益が500万円以上の場合、法人の方が税金面で有利になりやすいため、個人事業主としてスタートした後、売上がある程度安定してきたら法人化を検討するのもおすすめです。
ただし、会社設立と個人事業主それぞれにメリット・デメリットがあるため、事業内容や収益なども考慮しながら、より自分に合った経営形態を選びましょう。
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この記事を書いたライター
Wiz Cloud編集部
WizCloud編集部メンバーが執筆・更新しています。 Web関連、デジタル関連の最新情報から、店舗やオフィスの問題解決に使えるノウハウまでわかりやすくご紹介します!