「やらないとどうなる?」
インボイス制度は、「消費税額を正しく算出・徴税」するための制度です。
しかし、「誰が得する制度なの?」「"ひどい"と言われる理由は?」といった疑問も多くみられます。
今回は、インボイス制度の目的やメリット・デメリットなどをわかりやすく解説します。
免税事業者への影響についても記述しているため、個人事業主やフリーランスの方にも役立つ記事です。
【図解】今さら聞けないインボイス制度の仕組み
そもそもインボイス制度とは?
インボイス制度とは、 複数税率に対応した「仕入税額控除」の新しい方式 で、正式名称は「適格請求書等保存方式」です。
現行制度では、発行者、取引年月日、取引金額などが記載された「区分記載請求書」を用いて仕入税額控除が受けられます。
新制度の施行後は、請求書に記載すべき項目が追加された「適格請求書」の発行・保存が義務となります。
編集部
インボイス制度の施行後は、適格請求書がなければ仕入税額控除が適用されません。
消費税の仕入税額控除とは
仕入税額控除とは、事業者に対する消費税の二重課税を解消する仕組みです。
事業者が支払う 消費税の納税額は、売上時の消費税額(売上税額)から仕入れなどにかかった消費税額を差し引いて算出されます。
たとえば、2,200円(10%税込み)で仕入れた商品を3,300円(10%税込み)で販売した場合、納税額は【(消費者から受け取った消費税額300円)-(仕入先に支払った消費税額200円)=100円】となります。
≫【図解】2023年10月から始まるインボイス制度とは?世界イチわかりやすく解説!
インボイス制度は2023年10月から開始
インボイス制度は、2023年10月1日に施行されます。
ただし、 制度の施行から6年間(2029年9月まで)は「経過措置」期間 が設けられており、免税事業者等との取引で支払った仕入税額から一定割合の控除を受けることが可能です。
経過措置を受ける条件
経過措置期間中に特例の控除を受けるには、「区分記載請求書と同じ事項が記載された請求書」と「必要事項の記載された帳簿」がセットで必要です。
猶予期間の控除率は段階的に引き下がる
経過措置期間中の 控除率は、3年ごとの区切りで段階的に引き下げられる 予定です。
制度開始から3年間(2026年9月まで)は控除率80%ですが、3年後(2026年10月)からは控除率が50%に引き下げられます。
仕訳方法の変化に注意
猶予期間中に経過措置を受ける場合、会計上の仕訳方法が変わるため注意が必要です。
経過措置で税額控除が受けられない20%分(3年後以降は50%分)の損失については雑損失に計上するなどして、仮払消費税を振替えておく必要があります。
また、帳簿には経過措置を受ける旨・課税仕入の取引先・取引年月日・取引内容・支払額といった必要事項を記載しておきましょう。
インボイス制度の流れ(スケジュール)
適格請求書発行事業者の登録
適格請求書を発行するには、管轄となる税務署で「適格請求書発行事業者の登録」を行う必要があります。
適格請求書発行事業者の 登録申請書を提出すると、制度で使用するための登録番号が交付される 仕組みです。
なお、制度施行初日から「適格請求書発行事業者」になるためには、令和5年(2023年)9月30日までに登録申請を行う必要があります。
編集部
インボイス制度の登録申請受付は令和3年(2021年)10月1日から始まっています。
消費税課税事業者の登録
個人事業主など、現時点で免税事業者(消費税を納付していない事業者)の場合は、消費税課税事業者の登録も必要です。
登録時は、 管轄となる税務署で「消費税課税事業者選択届出書」を提出 します。
なお、インボイス制度導入の経過措置として、登録日が令和5年(2023年)10月1日から令和11年(2029年)9月30日の間にある場合は、課税選択届出書の提出を省略できます。
インボイス制度の目的・ねらい・必要性
正確な消費税額を把握する
インボイス制度の目的は、 「異なる税率を区別し、正確な消費税額を把握する」 ことです。
現行の「区分請求書」は、2種類の消費税率(10%と8%)を区別する決まりがないため、「税率8%で仕入れた品物を10%で計上して不当利益を得る」といった不正が発生してしまいます。
インボイス制度によって、消費税に関する情報をより詳細に記載することで、上記のような不正や経理のミスなどを防止する効果が期待できます。
編集部
適格請求書には追加記載項目が設けられているため、納税額を税率ごとに計算を分けることが可能です。
益税をなくす
「益税」とは、 納税の免除や軽減などで合法的に納税されずに、事業者の手元に残った消費税 を指します。
益金の原因となる制度は、おもに「事業者免税点制度」「簡易課税制度」の2つです。
インボイス制度の導入は、益金および益金によって発生する問題の解消に効果的です。
制度 | 内容 | 問題点 |
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事業者免税点制度 | 免税事業者は、商品・サービスの販売で受け取った消費税の納税義務が免除される | 課税事業者と免税事業者間に不公平が生じる |
簡易課税制度 | 課税売上5,000万円以下の事業者は、消費税額の算出方法が原則と異なる。 | 本来納付すべき消費税額との差額分が益税として手元に残る |
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簡易課税制度とは
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本来、課税事業者が納める消費税は 「受け取った消費税-支払った消費税」 の式で算出します。
しかし、課税売上5,000万円以下の事業者に関しては、「受け取った消費税-(受け取った消費税×仕入率)」という計算方法が適用されます。
簡易課税制度を適用すると、「受け取った消費税」に「仕入率」をかける分、納めるべき消費税額が安くなってしまいます。
インボイス制度で何が変わる?
区分請求書から適格請求書へ書式が変わる
インボイス制度の導入後は、仕入税額控除に必要な請求書が現行の「区分請求書」から「適格請求書」に切り替わります。
取引において対価を受け取る側の事業者(売り手)は、取引の際に相手(買い手)に対して 適格請求書を発行する義務が発生 します。
なお、適格請求書発行事業者ではない事業者が、適格請求書と誤解される可能性がある請求書や書類を交付することは禁止されており、違反した場合は罰則が科せられます。
編集部
取引後は、売り手・買い手のどちらも、発行された適格請求書を保管する必要があります。
仕入税額控除の適用要件が変わる
現行の制度では、「課税取引」に該当する全ての取引において、仕入れ側(買い手)は仕入税額控除を受けられます。
しかし、インボイス制度導入後は、売り手である取引先から発行された適格請求書を保存している取引のみ仕入税額控除の対象となります。
仕入時に適格請求書が発行されない場合、買い手は仕入税額控除が適用されない ため、売上時に受け取った消費税額をそのまま支払わなければなりません。
【適格請求書が発行された場合】
納付する消費税額 =(売上時に受け取った消費税額)-(仕入や経費にかかった消費税額)
【適格請求書以外の請求書が発行された場合】
納付する消費税額 = 売上時に受け取った消費税額
新たに導入される「適格請求書等保存方式」
適格請求書(インボイス)とは
適格請求書(インボイス)とは、 取引における消費税額や適用税率などが詳細に記載された請求書 の形式です。
なお、適格請求書を発行できるのは、事前に申請を行った「適格請求書発行事業者」のみです。
適格請求書と区分記載請求書の違い
適格請求書(インボイス)と区分記載請求書の違いは、 「請求書に記載すべき項目」 です。
適格請求書は、請求書への記載項目が追加されており、取引に関する情報をより詳細に書き残せます。
適格請求書(インボイス)の対象
「適格請求書発行事業者」に登録できるのは、原則として 消費税の「課税事業者」のみ です。
課税事業者とは、消費税の課税期間にかかる基準期間における課税売上高が1,000万円を超える事業者のことを指します。
免税事業者が適格請求書を発行するには、事前に「消費税課税事業者選択届出書」を所轄の税務署長に提出し、課税事業者となる必要があります。
免税事業者とは売上1,000万円以下の事業者
免税事業者とは、課税売上高が1,000万円に満たない事業者を指します。
免税事業者は、取引によって受け取った 消費税を納税する義務が免除 されます。
≫【図解】2023年10月から始まるインボイス制度とは?世界イチわかりやすく解説!
輸出時に発行する「インボイス」との違い
輸出時に発行する「インボイス」は、 貿易取引において税関への提出が義務づけられてい明細書を指します。
内容物の数量や価格、輸出者情報などが記載されており、貨物の明細書・請求書・納品書の三機能を果たします。
貿易取引で使う「インボイス」と、インボイス制度における「適格請求書」は全く別の書類を指す言葉なので、注意しましょう。
適格請求書(インボイス)なしで仕入額控除を受けられるケース
インボイス制度の施行後は、仕入税額控除を受けるために適格請求書が必須です。
ただし、請求書発行が困難な一部ケースにおいては、適格請求書がなくても仕入税額控除の対象となります。
インボイス制度の背景
インボイス制度施行の背景には、2019年10月に行われた 軽減税率制度導入による「複数税率化」 があります。
現行の「区分記載請求書」では商品ごとの消費税率や消費税額が細かく把握できないため、複数税率になることで、正確な税額計算と仕入税額控除が困難になりました。
新しく導入される適格請求書には、取引毎の消費税率と消費税額が細かく記載されるため、複数税率であっても消費税額を正確に把握できるようになります。
インボイス制度による影響
課税事業者
課税事業者には、 「適格請求書(インボイス)の発行」と「発行した適格請求書の写しの保管」が義務付けられます。
事前に「適格請求書発行事業者」の登録を行い、登録番号を取得しておきましょう。
また、仕入税額控除の適用を受けるためには、取引先(仕入れ先)から適格請求書の交付を受け、保存しておく必要があります。
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個人事業主やフリーランスと取引している場合
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取引先に個人事業主やフリーランスが含まれる場合は、取引先の事業者が課税事業者かどうか確認しておきましょう。
インボイス制度の導入後は、免税事業者との取引分に関して、仕入税額控除を受けられなくなります。
免税事業者
免税事業者はインボイス制度の対象外なので、請求書の内容を見直し等は必要ありません。
しかし、免税事業者との取引は仕入税額控除の対象外となるため、課税事業者のクライアントが減ったり、値段交渉をされたりする可能性があります。
上記のようなリスクを回避したい場合は、 課税事業者への転換・適格請求書発行事業者の申請も検討しましょう 。
編集部
特に、大企業との取引が多い場合や、これから課税事業者と取引する機会が増える場合は、適格請求書発行事業者に登録しておくのが無難です。
インボイス制度で買い手は何が変わる?
適格請求書の要件を確認する手間が増える
インボイス制度の施行後は、 請求書の処理負担が増える と考えましょう。
受け取った請求書の種類をその都度確認し、「適格請求書」と「その他の請求書」で異なる処理を行う必要があります。
また、記帳に際して、請求書の記載漏れがないかチェックしたり、発行元が適格請求書発行事業者かどうか確認したりする手間も発生します。
編集部
区分の際に消費税コードを誤ってしまうと、申告時の消費税額のミスにもつながるため注意が必要です。
経費申請の領収書もチェックしなければならない
インボイス制度の施行後は、経費精算の際にも、領収書やレシートに適格請求書の必要項目が記載されているか確認する必要があります。
小売店や飲食店などから受け取る領収書やレシートは、課税事業者や免税事業者が混在しやすいため、経理担当者の業務負担も大きくなるでしょう。
確認の手間を減らすには、「経費申請の際は、申請者本人でインボイスの内容に漏れがないかをチェックする」などの社内ルールを設けるとよいでしょう。
編集部
不特定多数に対して商品の販売等を行う小売店、飲食店、タクシーなどを利用した際は、要件を満たしたレシート・領収書を「適格簡易請求書(簡易インボイス)」として利用できます。
インボイス制度のメリット
請求書関係の処理業務を効率化できる
インボイス制度では、電子データの適格請求書(電子インボイス)の送付・保管が認められています。
電子インボイス対応のツールを活用することで、税率別の計算などを自動化できるため、 経理業務の効率化や人件費の削減に繋がります 。
また、請求書の印刷や郵送費用・保管スペースの削減などによってペーパーレス化も実現するでしょう。
売り手は取引先を広げるチャンスになる
インボイス制度の施行後は、仕入税額控除を受ける際に「適格請求書」が必要となるため、 「適格請求書発行事業者と優先的に取引したい」と考える事業者が増えると予想されます 。
そのため、売り手となる免税事業者はインボイス制度を機に課税事業者となることで、新規取引先獲得のチャンスを広げることが可能です。
現時点での課税事業者や、これから課税転換を検討している免税事業者は、あらかじめ営業先候補のリストを作成しておきましょう。
適切に消費税額を計算できる
現行制度の請求書は消費税率が混在しているため、確定申告や仕入税額控除を行う際の計算が煩雑で、ミスが起こりやすいという問題点がありました。
その点、インボイス制度で使われる「適格請求書」には、取引毎の適用税率や消費税額などが細かく記載されるため、 消費税額を正確に計算しやすくなります。
また、「適格請求書」は適格請求書発行事業者のみが発行できるため、「仕入税額控除によって免税事業者の手元に消費税が残る」という問題も解消できます。
インボイス制度のデメリット
取引や報酬が減る可能性がある
インボイス制度導入後は、適格請求書が発行された取引のみ仕入税額控除の対象となるため、取引先を「適格請求書発行事業者」に限定する企業が増える可能性があります。
その結果、適格請求書を発行できない免税事業者は取引先が減ったり、 免税事業者の手元に残る消費税分の金額を値下げ交渉されたりするリスクが発生 します。
クライアント離れや売上減少を回避したい場合は、「適格請求書発行事業者」への転換も検討しましょう。
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経過措置の間は「消費税課税事業者選択届出書」の提出が不要
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通常、「適格請求書発行事業者」に登録するには、あらかじめ「消費税課税事業者選択届出書」を提出し、課税事業者になっておく必要があります。
ただし、経過措置期間(2023年10月1日~2029年9月30日まで)に「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出する場合に関しては、消費税課税事業者選択届出書の提出は不要です。
なお、上記の経過措置を受ける場合は、 適格請求書発行事業者として登録を受けた日から課税事業者とみなされます 。
消費税を申告・納税する業務負担が増える
免税事業者が課税事業者に転換し、「適格請求書発行事業者」に登録した場合、今まで免除されていた消費税の納税義務が発生します。
課税事業者になると、納税による支出はもちろん、申請手続きや請求書のフォーマット変更といった業務負担が増える点も考慮しなくてはいけません。
課税事業者への転換は、 メリットとデメリットを洗い出したうえで慎重に判断しましょう 。
請求書の様式を変更しなくてはいけない
インボイス制度の導入後、課税事業者は請求書の様式を「区分記載請求書」から「適格請求書」に変更する必要があります。
ミスや混乱を防止するためにも、あらかじめ自社の請求書の様式やフォーマットを見直し、適格請求書に必要な項目を含んだものへアップデートしておきましょう。
また、売り手・買い手どちらも、適格請求書の保存が必須となるため、 適格請求書に対応した各種会計ソフトやツールの導入をおすすめします 。
編集部
適格請求書の扱いや保存、記帳方法について社内全体へ周知しておくことも重要です。
請求書にかかわる経理処理が複雑になる
インボイス制度で使う「適格請求書」は、従来の区分記載請求書よりも 記載する項目が多く、作成・確認に手間がかかります 。
また、仕入税額控除の金額の集計作業や自社が発行した適格請求書の控えの保存など、請求書関連の業務負担も増大します。
あらかじめ、業務内容と必要なリソースを洗い出し、経理スタッフの増員や業務を効率化するためのシステムの導入などを検討しましょう。
消費税(仕入税額)の控除額が減る可能性がある
インボイス制度の施行後は、免税事業者から商品・サービスを仕入れた場合、仕入税額控除を受けられません。
つまり、仕入先が免税事業者の場合、消費税の払い損になってしまう可能性があるため、注意が必要です。
自社の利益減を回避したい場合は、仕入れ先の見直しや価格交渉などを行いましょう。
≫【図解】2023年10月から始まるインボイス制度とは?世界イチわかりやすく解説!
インボイス制度に向けた準備
課税事業者
「適格請求書発行事業者」に登録
課税事業者は、売り手となる際「適格請求書」を発行できるよう、「適格請求書発行事業者」に登録しておきましょう。
申請方法は、 「e-Taxによる電子申請」または「納税地所轄の税務署へ書類提出(郵送可)」 のいずれかです。
なお、制度施行初日(2023年10月1日)から「適格請求書発行事業者」となるには、2023年9月30日までに届け出が必要です。
経理システム・会計システムの見直し
現在利用している経理システムや会計ツールがインボイス制度に対応できるかどうかも、あらかじめ確認しておきましょう。
インボイス制度施行後は、 それぞれの取引が課税取引かどうかを仕分けたり、適格請求書を保存したりする仕組みが必要 となります。
特に、パッケージ型の会計ソフトや、独自に設計したシステムを使用している場合は、この機会にクラウド化を検討してみましょう。
免税事業者
「適格請求書発行事業者」の登録を検討
免税事業者は、「適格請求書発行事業者」に登録するかどうか検討しましょう。
課税事業者へ転換する場合は、「消費税課税事業者選択届出書」と「適格請求書発行事業者登録の申請書」を提出する必要があります。
また、 課税転換すると、納付額の計算や申請といった業務が発生する ため、あらかじめノウハウ構築やリソースの確保等もしておきましょう。
取引先との話し合い
課税事業者と取引がある場合は、インボイス制度施行後の 取引継続や価格などについて話し合っておきましょう 。
特に、価格については、「仕入税額控除されない消費税の分値段を下げてほしい」と交渉される可能性があります。
場合によっては、取引先を失ってしまう可能性もあるため、相手方の要望も聞きながら意見をすり合わせることが重要です。
買い手が対応すべきことはある?
制度の理解と社内研修
買手側の事業者は、新制度後の対応について社内研修を行いましょう。
取引先との話し合い
仕入先の事業者が免税事業者の場合は、 インボイス発行事業者となる意向について確認 しておきましょう。
相手方に課税転換の移行が無い場合、仕入税額控除が受けられなくなってしまうため、取引の継続や仕入価格の変更についても検討が必要です。
また、仕入先がインボイス発行事業者になる場合は、請求書の様式や受領方法などについて認識を共有しておくことをおすすめします。
インボイス制度が「やばい」「ひどい」と言われる理由
インボイス制度に批判が集まる主な理由は、 「免税事業者の取引先や報酬が減ってしまう可能性がある」 点です。
日本国内にある事業者の半分以上*が「免税事業者」にあたるため、制度施行によって多くの事業者に影響が出ると予想されます。
また、「適格請求書発行事業者」になるため課税転換した場合、税負担による支出や業務負担が増えてしまうことも、反対意見の要因となっています。
*出典:財務省|平成28年度 与党税制改正大綱 参考資料②-2インボイス制度に抜け道はないのか?
結論から言うと、インボイス制度を回避するための 合法的な抜け道は存在しません 。
もしも消費税の不正納付が発覚した場合、 厳しい罰則が科されることもある ため、制度を正しく理解し、税務当局の指導に従うことが大切です。
とはいえ、各種特例や免除など、 税負担や事務負担を軽減するための支援措置はいくつか存在するため、活用することでマイナスな影響を緩和することは可能です。
インボイス制度廃止の可能性はある?
インボイス制度は、これから始まる施策のため、今後の廃止の有無はわかりません。ただ、そもそもインボイス制度が導入された目的として、簡単に言えば 「事業者の不当な収入をなくし、税金を的確に納めさせる」 というのがあるので、廃止されない可能性のほうが高いでしょう。
税負担・事務負担を軽減するための支援措置
課税事業者への負担軽減対策
1万円未満の仕入れは適格請求書の保存が不要
要件に当てはまる中小企業が国内で課税仕入れを行う場合、その 仕入価格が1万円未満であれば適格請求書の保存が不要 になります(期限あり)。
対象事業者 | 2年前の課税売上が1億円以下 または 前年の1~6月(法人は事業年度の上半期)の課税売上が5,000万円以下 |
---|---|
対象期間 | 2023年10月1日(日)~2029年9月30日(日) |
1万円未満の返品や値引きへは適格返還請求書の発行が不要
適格請求書発行事業者は、取引後に 値引きや返品があった場合、「適格返還請求書の交付」が義務付けられています 。
ただし、振込手数料や売上値引きの処理にかかる事務処理負担を軽減するため、1万円未満の返品や値引きについては、上記の義務が免除されます。
なお、この措置に関する対象事業者や対象期間などは設定されていません。
免税事業者からの仕入れに対する仕入税額控除の適用
インボイス制度の経過措置期間は、免税事業者などからの仕入れについても一定の割合で控除が認められます。
適用条件 |
・売り手の氏名または名称 ・取引年月日 ・取引内容 ・経過措置の適用を受ける課税仕入れであること・その割合 ・課税仕入額 |
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適用期間 | 2023年10月1日~2029年9月30日 |
控除割合 | 2023年10月1日~2026年9月30日:仕入税額の80% 2026年10月1日~2029年9月30日:仕入税額の50% |
免税事業者が適格請求書発行事業者になる場合の負担軽減対策
消費税の納税額の2割特例
インボイス制度の導入にあたり、免税事業者が課税事業者に転換したうえで適格請求書発行事業者になった場合、 一定期間納税する消費税額が売上税額の2割に軽減 されます。
計算式 | 納税する消費税額 = 売上にかかる消費税額 × 20% |
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対象事業者 | 適格請求書発行事業者になった免税事業者 |
対象期間 | 2023年10月1日~2026年9月30日までの日が属する各課税期間 |
編集部
インボイス制度の導入に伴い課税事業者になった場合、その納税方法は本則課税・簡易課税・2割特例から選択できます。
適格請求書発行事業者の登録申請期限が延長
2023年度税制改正により、 2023年9月30日までに登録申請を行えば、2023年10月1日から適格請求書発行事業者になれることになりました。
小規模事業者への持続化補助金が上乗せ
適格請求書発行事業者に登録することで、小規模事業者が対象の 持続化補助金の補助上限額が50万円上乗せ されます。
申請する枠 | 補助上限額 (本来の補助上限額) |
補助率 |
---|---|---|
通常枠 | 100万円 (50万円) |
原則2/3以内 |
成長・分配強化枠 (賃上げや事業規模の拡大) |
250万円 (200万円) |
|
新陳代謝枠 (創業・跡継ぎなど) |
250万円 (200万円) |
インボイス制度に関するよくある質問
A
飲食業や建設業の場合は仕入先に免税事業者が含まれる事が多く、影響も大きいと考えられます。
A
インボイスを発行しないと、販売先は原則として消費税の仕入税額控除ができなくなります。
そのため、仕入れ先が免税事業者の場合、自社の税負担増に繋がる可能性があります。
また、免税事業者に関しては、取引先や報酬が減るリスクが懸念されます。
A
インボイス制度とは、「適格請求書が無い場合、仕入税額控除が受けられなくなる制度」です。
A
インボイス制度を導入することで、益金などが解消されるため、国に納められる税金が増える見込みです。
また、「適格請求書発行事業者」にとっては、取引先拡大のチャンスに繋がる可能性があります。
A
インボイス制度は、益税をなくし、正確な消費税額を把握・徴税するための制度です。
A
インボイス制度は、複数税率によって発生する不正防止のために必要な制度です。
A
免税事業者は、インボイス制度の導入によって取引先や報酬が減少する可能性があるためです。
制度施行後は、「適格請求書発行事業者」との取引のみ仕入税額控除の対象となります。
そのため、仕入れ先を「適格請求書発行事業者」に限定するケースや、仕入れ値の値下げ交渉等が増加する可能性があります。
A
インボイス制度について、延期や見直し、廃止を希望する声があがっていますが、現状廃止や延期などについての発表はありません。
A
免税事業者の個人事業主やフリーランスは、インボイス制度の導入によって取引先が減る可能性もあります。
免税事業者との取引は仕入税額控除の対象外となることから、仕入れ先を見直す企業の増加が予想されるためです。
廃業リスクを回避したい場合は、課税事業者への転換と、「適格請求書発行事業者」への登録を検討しましょう。
A
インボイス制度の導入によって益金が解消されるため、税収が増加すると予想されます。
まとめ
インボイス制度は、益金や複数税率によって生じる不正などを防止し、消費税を適切に算出するための制度です。
2023年10月1日以降は、「適格請求書」が発行された仕入れのみ、仕入税額控除の対象となります。
制度施行後は、請求書業務が増えたり、複雑化したりするため、電子インボイス対応のソフトを活用して業務効率化を図りましょう。
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この記事を書いたライター
Wiz Cloud編集部
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