「税金の計算や節税対策はどうすればいいの?」
個人事業主として開業したばかりの方や、これから開業を検討しているフリーランスの方にとって、税金の知識は欠かせません。
しかし「どんな税金を払わなきゃいけない?」「節税の方法は?」など、疑問も多いはずです。
本記事では、個人事業主が支払うべき税金の種類から、計算方法、節税対策までをわかりやすく解説します。
さらに、効率的な税務管理を実現するための会計ソフトの活用方法もご紹介します。
目次
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個人事業主が支払う主な税金とは?
所得税
所得税は、個人事業主の所得に対してかかる国税です。 年間の売上から経費や各種控除を差し引いた「課税所得」に応じて、5%から最大45%の累進課税が適用 されます。
確定申告によって納付額を決定するため、帳簿付けや領収書の整理が必須要です。所得税は個人事業主の税負担の中心となるため、節税対策の優先度も高くなります。
所得税の計算方法
所得税は累進課税制度で、所得が多いほど高い税率が適用されます。
たとえば、課税所得が195万円以下なら税率は5%ですが、4,000万円超なら45%に跳ね上がります。
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【課税所得別】税率と控除額の一覧表
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課税される所得金額 税率 控除額 1,000円~194万9,000円まで 5% 0円 195万円~329万9,000円まで 10% 97,500円 330万円~694万9,000円まで 20% 427,500円 6,95万円~899万9,000円まで 23% 636,000円 900万円~1,799万9,000円まで 33% 1,536,000円 1,800万円~3,999万9,000円まで 40% 2,796,000円 4,000万円 以上 45% 4,796,000円
住民税
住民税は、都道府県と市区町村に支払う地方税で、前年の所得に応じて課税されます。税率は、課税所得の約10%(市区町村民税6%、都道府県民税4%) が基本ですす。
税額は「所得割」と「均等割」の2種類からなり、所得がある限り毎年支払う必要が あります。ただし、前年の所得に基づいて課税されるため、開業初年度は発生しません。
所得税と異なり、税率が一律な点も徴です。
住民税の計算方法
個人事業税
個人事業税は、特定の業種で一定以上の所得がある場合に課される地方税です。 課税対象業種には、小売業、飲食業、サービス業などが含まれます 。
所得が290万円を超えると課税対象となり、業種ごとに3~5%の税率が適用されます。
たとえば、サービス業では5%の税率です。開業したての方は該当しないことも多いですが、事業が軌道に乗ると負担が増すため注意が必要です。
個人事業税の計算方法
消費税(課税事業者の場合)
消費税は、 売上に対して発生する税金で、基準期間(2年前)の課税売上高が1,000万円を超えると課税事業者 となります。
たとえば、2023年に売上が1,100万円だった場合、2025年に消費税の納税義務が生じます。
また、インボイス制度に伴って「適格請求書発行事業者」となった場合は、課税売上が1,000万円以下でも消費税を納める必要があります。
なお、消費税率は原則10%で、軽減税率は8%です。納付には「簡易課税制度」や「本則課税」の選択も関わってくるため、事前の理解が重要です。
消費税の計算方法
上記の計算方法をを「差額納付方式」と呼びます。課税事業者になると帳簿の記載や請求書の管理が複雑になるため、インボイス制度にも対応した会計ソフトの導入が有効です。


インボイス制度の目的をわかりやすく解説!事業者にとってのデメリットや「ひどい」と言われる理由は?
インボイス制度の目的やメリット・デメリットなどをわかりやすく解説します。免税事業者への影響についても記述しているため、個人事業主やフリーランスの方にも役立つ記事です。
詳しくはこちら固定資産税
固定資産税は、 事業で使用している土地や建物、償却資産(例:大型機械や事務所の設備)に対して課される地方税 です。
不動産を所有していなくても、高額な設備や備品を保有している場合は「償却資産申告書」を自治体に提出し、固定資産税の課税対象となることがあります。
たとえば、製造業などでは設備投資が大きく、数十万円単位の税金が発生することもあります。毎年1月1日時点の保有資産が対象です。
新築建物などには軽減措置があるケースもあるため、通知書の内容を確認し、必要があれば市区町村に相談しましょう。納税は年4回に分けて行われるのが一般的です。
固定資産税の計算方法
なお、課税標準額は、固定資産の評価額をもとに市区町村が決定します。確定申告の手順と必要書類
個人事業主は 毎年1月から12月までの収支をまとめ、翌年2月16日から3月15日までに確定申告を行う 必要があります。
なお、提出にはマイナンバーカードや本人確認書類、必要に応じて領収書などの保存も求められます。
確定申告の手順
- 青色申告or白色申告を決める
- 確定申告書の作成(確定申告書作成コーナー/確定申告ソフトで作成/手書きで作成/税理士などに依頼)
- 申告書類を準備・作成・提出する
申告書類の提出方法
- 窓口に提出
開庁時間は原則、平日8時30分から17時まで。申告内容についてその場で相談も可能。
ただし、申告期間中は混雑が予想されるため、時間に余裕を持って公共交通機関で行くのがおすすめ。
休日開庁が実施される場合もあるので、事前に国税庁のサイトで確認しておきましょう。 - 郵送
日本郵便が取り扱う 「第一種郵便物(定形・定形外郵便)」で送付するのが推奨されています。
確定申告書は「信書」に該当するため、信書の送付が認められている郵送方法を選ぶ必要があります。
運送業者などが行う信書配送サービスも可能ですが、確実性・追跡性のある「簡易書留」や「特定記録」を付けた第一種郵便が安心。 - 時間外収受箱に投函
24時間いつでも利用可能で、開庁時間に行けない場合にも便利。
ただし、提出期限日の夜12時までに投函しないと期限内扱いにならないため、早めの対応が必須。 - e-Taxで送信
自宅から24時間送信可能で、税務署で並んだり郵送のために紙を印刷したりする必要がない。
国税庁のサイトで案内に従えば、簡単に申告書の作成と提出が可能。
ただし、事前に税務署への届出やパソコン設定が必要なため、1月中に準備しておくのがおすすめ。
確定申告の必要書類
作成書類 | 申告書提出時に必要な書類 |
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個人事業主がするべき節税対策
青色申告を行う
青色申告と白色申告の違い
青色申告は、 最大65万円の控除や赤字の繰越など税制上のメリットが多く、白色申告よりも高い節税効果 が得られます。
ただし、青色申告には複式簿記や決算書の提出といった要件があります。
一方、白色申告は手続きが簡単ですが、控除額が少なく節税面で青色申告と比べて不利です。
事業を継続していくなら、帳簿管理の手間はあるものの、青色申告を選ぶ価値は十分にあります。

青色申告特別控除のメリット
青色申告のメリットは、 最大で65万円の特別控除が受けられる点 です。
たとえば、事業所得が300万円なら、65万円を引いた235万円に税率がかかるため、数万円以上の節税につながる可能性があります。
なお、e-Taxで電子申告を行えば、紙提出よりも有利な控除が得られます。

個人事業主が対象となる共済に加入する
共済制度は、将来への備えと節税の両立ができる有効な手段です。
掛金が全額所得控除されるため、加入するだけで節税効果が得られ、税負担を軽減しながら資金を積み立てることが可能 です。
退職金や老後資金の準備としても活用できるほか、制度によっては事業継続リスクに備えるものもあるため、経営の安定にも役立ちます。
主な共済制度
- 小規模企業共済
- 中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)
- 国民年金基金
- iDeCo(個人型確定拠出年金)
国民健康保険・国民年金(社会保険料)について
個人事業主は会社員と異なり、自ら健康保険と年金に加入します。国民健康保険の 保険料は前年の所得に応じて決まり、自治体によって金額が異なります 。
国民年金は全国一律で、2025年時点で月額16,980円です。
これらは税金ではありませんが、確定申告時に「社会保険料控除」として所得から差し引くことができます。将来の生活保障と節税の両面から、きちんと支払うことが大切です。
家族への給与支払いと専従者控除
専従者控除とは、 家族を事業に従事させている場合、その労働に対する給与を「専従者給与」として経費計上できる制度 です。
たとえば、家族に月5万円の給与を支払うと、年間60万円が経費として控除されます。
これは 青色申告者のみが利用できる制度で、事前に税務署へ「青色事業専従者給与に関する届出書」の提出が必要です。
ただし、実際に仕事をしていることや、支払いの実態があることが前提です。
家事按分を利用する
個人事業主の場合、事業と私生活で共通に使用する支出を「家事按分」として、事業に関連する割合だけ経費にできます。
例えば自宅を仕事場としている場合、家賃や光熱費、通信費の一部を経費に計上可能 です。
費用のうち事業に使っている割合を明確にし、合理的な方法で算出するのが基本です。1日のうち8時間を仕事に使っているなら、家賃の約3分の1を経費計上できます。
家事按分を活用することで、支出を漏れなく経費化でき、効果的な節税につながります。
経費に計上できるものを漏れなく申請する
交通費、仕事で使うパソコン代金、書籍代、セミナー費、通信費、打ち合わせの飲食費など、事業や業務に関わる支出はすべて経費にできる 可能性があります
見落としがちな小さな支出も、積み重ねると節税効果が大きくなるため、細かく管理しましょう。
日々の記録を怠らず、レシートや明細は保存し、領収書が出ない場合は支払記録を残す習慣が大切です。
控除を受ける
所得控除を活用すれば、課税対象となる所得を減らせます。控除の種類は多く、適用漏れを防ぐことが重要です。
特に 確定申告で自ら申請する形式のものが多いため、内容を把握しておく必要があります 。
たとえば医療費控除や生命保険料控除、扶養控除などは該当するケースが多く見られます。
控除を正しく申請することで、納税額を数万円単位で減らすことも可能です。
個人事業主が使える主な控除一覧
- 基礎控除
- 青色申告特別控除
- 配偶者控除・扶養控除
- 医療費控除
- 社会保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 生命保険料控除
- 雑損控除
- 寄附金控除(ふるさと納税)
- 寡婦・寡夫控除
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ふるさと納税
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ふるさと納税は、地方自治体への寄附金制度です。
実質2,000円の自己負担で返礼品を受け取りつつ、所得控除も受けられます 。
所得に応じて上限額が設定されており、個人事業主も対象ですが、確定申告での申請が必要です。
生活費を圧迫せず、節税と社会貢献が両立でき、特産品などが受け取れるのも人気の理由です。
減価償却の特例を活用する
30万円未満の事業用資産は、原則では複数年に分けて経費にしますが、 青色申告者であれば一括で全額をその年の経費にできる 特例があります。
たとえば、25万円のパソコンを購入した場合、通常は4年で分割しますが、特例を使えば全額をその年の経費にできます。
一括処理により、その年の所得を大きく圧縮できるため、利益が出そうな年に使うと節税効果が高まります。節税タイミングを調整するうえで有効です。短期前払費用の特例を活用する
「短期前払費用の特例」とは、 翌年以降に発生する費用であっても、条件を満たせばその年の経費として全額計上できる制度 です。
例えば、来年分の家賃や保険料を年払いした場合、通常は分割で経費処理しますが、特例下では年内に支払えば全額を当年の経費として処理できます。
ただしこの特例は、支払期間が1年以内かつ継続的に同様の支払いがあることが条件です。
年末に支払を前倒しすることで、当年度の所得を圧縮でき、節税効果を得ることができます。
設備投資への減税制度を活用する
個人事業主が新たに機械やIT機器などの設備を導入した場合、 一定の条件を満たせば即時償却や特別償却、税額控除などの優遇措置を適用可能 です。
例えば、「中小企業経営強化税制」では、生産性向上を目的とした設備投資を行うと、最大で10%の税額控除が可能になるケースもあります。
なお、対象となるのは生産性向上やIT導入を目的とした機器やシステムで、事前の申請が必要です。
売上によっては法人化を検討する
個人事業主のまま事業が拡大し、所得が一定額を超えると、法人化による節税が有利になる場合があります。
目安として、 年間所得が800万~900万円を超えると法人化による節税メリットが見込めます 。
法人にすると、給与所得控除の活用、役員報酬の調整、家族への給与支給など、税制上の選択肢が増えます。
ただし、社会保険への加入義務や法人設立の手続きなど、事務負担の増加もあるため、税理士と相談の上で慎重に判断しましょう。
税務管理を効率化する会計ソフトの活用
会計ソフトを導入するメリット
会計ソフトを導入することで、 日々の記帳から確定申告までを効率化できます 。
手入力のミスを減らせるだけでなく、税制改正やインボイス制度にも自動対応してくれるため安心です。
また、売上や経費の推移をグラフで可視化でき、経営判断にも役立ちます。
紙の帳簿やExcelでの管理と比べて、作業時間が大幅に短縮されるのも大きな利点です。特に事業を始めたばかりの方ほど、早めの導入がおすすめです。
会計ソフトの主な機能と特徴
多くの会計ソフトには、 仕訳入力、請求書作成、レポート出力、確定申告書の自動作成など の機能が備わっています。
中には銀行口座やクレジットカードと連携し、取引を自動で記帳する機能もあり、入力の手間を最小限にできます。
また、スマートフォン対応のアプリもあり、外出先でも記帳やチェックが可能です。
クラウド型であればデータの保存や共有も簡単なため、税理士との連携もスムーズに進みます。
まとめ|税金の知識を身につけて、安心して事業を運営しよう
税金管理の重要性とポイントの再確認
個人事業主にとって税金の管理は、事業の安定と信頼構築に直結します。
所得税や住民税などの基礎的な税金はもちろん、節税のための制度や控除を知っておくことが大切です。
とくに 青色申告や経費処理の考え方は、長期的な納税負担を軽減するカギ となります。
税金をただ「支払うもの」と捉えるのではなく、「コントロールできるもの」として捉えることが、健全な経営の第一歩になります。
会計ソフトを活用した効率的な税務管理のすすめ
税務管理を効率化するには、会計ソフトの導入が効果的です。
帳簿付けや申告作業が自動化されることで、作業時間を削減できるだけでなく、ミスや漏れも防げます。
さらに、リアルタイムで収支を把握できるため、キャッシュフローの管理や経営判断にも役立ちます。
特に初年度は手探りになりがちですが、信頼できるツールを使うことで、税務への不安が軽減され、事業運営に専念できます。

この記事を書いたライター
Wiz Cloud編集部
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