【飲食店】人件費削減のポイントとは?失敗しないポイントと進め方

新型コロナの影響により景気の悪化は著しく深刻化しています。とくに景気の変動にまっさきに影響を受けるのは飲食店です。多くの店舗では苦境に陥っているところが多く事業存続のため人件費の削減が急務となっていることでしょう。
このような厳しい景況が続く最中、い事業を安定的に継続させるためにはいかに固定費を抑えるかという点がポイントになってきます。そんな固定費の中でもとくに大きな固定費といえば人件費です。経営者はこの人件費を削減するために、時にはリストラというかたちで講じる場合も少なくありません。

本記事では、店舗経営における人件費削減のポイントを解説するとともに、飲食店や中小企業に役立つ人件費削減の進め方についても詳しく解説します。
 

人件費削減を考えるとき

まず人件費削減を考える前に、人件費にまつわる基礎知識を身に付けておく必要があります。ここでは、人件費とは具体的にどのような費用なのか、人件費削減を考える際の目的とメリットについてお伝えします。

人件費とは?

人件費とは、企業や店舗の費用の中でも、雇用によって発生する給与・各種手当などの費用のことをいいます。人件費に含まれる具体的な費用は以下となり、経営状況を判断するためには正確に把握しておくべき費用になります。

≪人件費にかかる費用≫
・給与、各種手当
・賞与
・退職金、退職年金の引当金
・社会保険、労働保険料の企業が負担する法定福利費
・慶弔金、社員旅行の費用などの福利厚生費
・通勤における定期代や社宅などの費用

飲食店の場合であれば、売上に対する適正な人件費率は、25%~30%程度で、食材費(Food cost)と人件費(Labor cost)を合わせたFLコストは、売上の55%~60%に抑えることが飲食店の経営において基本と言われています。

人件費削減における目的とメリット

目的と気を付けたい点

人件費の削減を考える際は、「会社を黒字化したい」「資金繰りを改善したい」など、店舗の経営者によっても目的は異なるでしょう。これらの目的を達成するために従業員の給料の削減を考えるのが一般的です。確かに人件費の削減は、資金繰りや決算内容を改善するための方法としては一時的な効果はあるでしょう。しかしながら、人件費削減の方法や意味の捉え方を間違えてしまうと会社の業績を落してしまうことになりかねません。そして、その部分をしっかり見極めなければ会社の存続に大きく影響する可能性さえあるのです。
そのため、人件費削減は他のコスト削減に比べて最も難しく、アフターフォローが必要な施策といえます。

メリット

人件費削減におけるメリットは、一般的に以下の3つが挙げられます。

①コスト削減による相乗効果の期待

人件費削減のメリットの一つとしてコスト削減の相乗効果が期待できることにあります。とくにリストラや希望退職など人員整理による人件費削減の場合のメリットですが、従業員が減ることでそれに伴うコストも下がります。そのため、経費削減には直接的に効果があると言えるのです。
とくに従業員を減らすことで、以下の経費も抑えることが可能です。

・給与
・ボーナス
・教育費
・交通費支給分
・事務所賃料

このように、従業員を一人削減するだけでもすぐに効果は表れます。ただし、メリットもある反面、残された従業員のモチベーション低下などのデメリットにも直結するため、長期的な視野による経営改善には向かない手法といえるでしょう。

②浮いた資金を有効活用できる

人件費を削減することで、浮いた余剰資金を他の目的として活用することが可能です。いわゆる他の事業へ投資することも可能となるのです。
資金の有効活用としては事業・設備投資の他、外注費や他事業展開、社員教育などの項目が考えられますが、資金の用途が借金の補てんである場合は、0からのスタートになることもあります。借金の返済が不要であれば多くの会社が利益につながるといえるでしょう。そうすると従業員への還元もできるため、従業員のモチベーションの向上も期待できます。とくに従業員の業務負担を減らす外注費の伸びは注目したい項目です。

③銀行などの金融機関からの評価が上がる

人件費の削減は、銀行からの評価が上がるというメリットがあります。銀行などお金を融資する金融機関が会社を評価するのは利益が出ているかという点のみに注目します。赤字であれば評価が下がり、黒字であれば評価は上がります。人件費を削減することは、利益の増加に直結することなので当然評価は上がっていくのです。銀行からの評価が上がれば融資も受けやすくなるでしょう。

人件費削減する上で失敗しないポイント

人件費削減を行う上で失敗しないポイントとして「原価分解」と「損益分岐点」について理解していく必要があります。それぞれみていきましょう。

原価分解(固変分解)

人件費削減を検討する上で必ず押さえておくべきポイントの一つは、「原価分解」です。

企業や店舗の経営状況を分析する上では、「固定費」と「変動費」の振り分けが必要です。そしてこの振分けのことを原価分解(固変分解)といいます。
しかし費用の中には、固定とも言えたり、変動とも言えたりするものがあるため、厳密に固定費と変動費を分けるのは難しく業種や企業によって振分け方が異なってきます。原価分解(固変分解)の方法はさまざまですが、最も一般的に使われているのが「勘定科目法」になります。この方法で振り分ける際は、中小企業庁の中小企業の原価指標を参考にしてみると分かりやすいのでおススメです。

▼固定費と変動費について詳しく解説した記事はこちら▼
>>固定費と変動費の違いは?すぐに実践できる経費削減方法を紹介!

損益分岐点を考えよう

グラフ基本的に利益を出すことを考えると「損益分岐点」に行きつきます。そもそも損益分岐点とは、費用と利益が同じであり、利益も損も出ない売上高のことをいいます。数式で表すと以下です。

・y=ax-b (y=利益、a=変動利益率、x=売上、b=固定費)

この数式から利益=(売上×変動利益率)-固定費であり、売上×変動利益率=粗利益となるため、粗利益から固定費を引いて0となるのが損益分岐点です。つまり、損益分岐点が低い会社は利益が出やすく黒字体質であるのに対し、損益分岐点が高い会社は利益が出にくく赤字体質となります。人件費をはじめとした費用を削減するには、この損益分岐点を低くする必要があるのです。

》【飲食店の経費節減】店舗のコスト削減に役立つ固定費と変動費の違いも解説!

 

人件費削減の進め方(飲食店)

では実際に飲食店で実施する場合の人件費削減の進め方をみていきましょう。

まずは現状把握を行う

人件費削減を行う第一歩として、まずは店舗の運営の際に発生している人件費が適正かどうか現状を把握する必要があります。人件費を適正に管理するためには「人事売上高」「労働分配率」「労働生産性」の3つの基準があります。

①人事売上高

人事売上高は、従業員の労働時間1時間ごとの売上高を示した数値です。基準は4,000円~5,000円程度となり、計算式は以下です。

売上高÷従業員の労働時間=人事売上高

(例)
店舗の1日あたりの目標の売上が30万円で8時間勤務の従業員を8名勤務させた場合・・・
30万円(売上高)÷64時間(従業員の労働時間)=約4600円 適正

②労働分配率

労働分配率とは粗利高に占める人件費の割合のことを示す数値です。40%以下が基準となり、以下の計算式で求めることが可能です。

人件費÷粗利高×100=労働分配率

(例)
月間売上300万円、食材原価率30%で月間90万円の場合
粗利高:300万円‐90万円=210万円
人件費100万円であれば・・
100万円(人件費)÷210万円(粗利高)=47%(労働分配率) 基準値オーバー
→労働分配率40%以下にするには、人件費84万円以下が適正となります。

③労働生産性

労働分配率は、従業員1人あたりの生産性を示す指標です。基準は50万~60万となり、計算式は以下となります。

粗利高÷換算人員=労働生産性

(例)
週30時間勤務の従業員2名と週20時間勤務の従業員3名がいて週30時間勤務を基準とした場合
120時間(人員の総勤務時間)÷30時間(基準の勤務時間)=換算人員4名

粗利高が240万円であれば・・
240万円(粗利高)÷4名(換算人員)=60万円(労働生産性) 適正

これらの基準値をクリアすればいいというものではなく、適正値を意識して運営することが大切といえます。まずはこれらの数値を計算し、人件費の無駄はないかチェックすることが先決といえるでしょう。

シフト変更での削減の検討

現状の人件費が適正かどうかチェックした後は、シフト変更で人件費を削減できるかどうか検討しましょう。
現状のシフト管理において、「とりあえず1日に〇人出勤していればいいだろう」と日ごとの出勤人数だけでシフトを管理してはいないでしょうか。シフト制の良い点は、1日の労働時間を固めることなく、ランチタイムなどのピーク時に従業員の数を多くして、来店客が落ち着く夕方前の時間帯は少人数にするなど、人数だけでなく勤務時間の調整ができるところがメリットといえます。そのため、シフト管理を行う際は、1日ごとの人件費の計算をするのではなく、時間ごとの人件費の計算を行う必要があります。シフトを管理する店舗責任者は、シフトが確定する段階で人件費も確定するということを踏まえた上で管理するようにしましょう。

人員削減・給与見直しの検討

上記の方法でも、経営改善が見込めない場合は、最終手段としてリストラや給与の見直しも視野に入れなければなりません。ただし前章でもお伝えしたとおり、リストラや給与カットなどは、一時的な効果は込みめたとしても、従業員のモチベーション低下などにつながります。従業員のモチベーションが下がると、会社の売上が下がり業績が下がるため、早急な経営の立て直しを迫られ、また人件費を削減するという悪循環に陥ってしまいます。そのため長期的な経営の改善を行う場合は、あまり効果的な手法とはいえないでしょう。
とはいえ、会社の業績は著しく悪い場合は減給やリストラをせざるを得ません。その場合は減給を行う制度を設けたり、社員の減額を行う前に役員の報酬をカットすることから検討しましょう。

人件費削減の伝達

最後に従業員に対して会社の現状や減給などについて詳細を説明しましょう。ただし伝える際はいくつか注意しなければいけない点があります。
減給などの人件費削減について、全従業員を一同に集めて説明してしまうと一方的な伝達と捉えて従業員に不満が残る可能性が高いです。そのため最初は、個別面談を行い人件費削減の旨を説明して従業員の理解を求めながら、相談に応じるようにする方法をとるのがいいでしょう。また給与を減額する場合は、業績が回復すれば給料を現状まで回復するなどといった今後の展望を合わせて伝えることも必要です。

人件費削減を行った後は、業務縮小も考えよう

飲食店にて、人員削減や減給などを行った場合は、それに見合ったように営業時間の短縮やメニューを減らすなど、残された従業員の負担軽減を図るようにしましょう。人員を削減したのにも関わらずこれまでどおりの営業ということになれば、一人の負担が大きくなり残された従業員まで辞めてしまうことにもなりかねません。
とくに飲食店の場合は、一人ひとりのマンパワーに頼る店舗経営となるため、人件費削減を行った場合には、時間短縮やメニューを減らすなどの業務縮小が効率的といえるでしょう。

まとめ

今回は、飲食店の経営者に向けて、人件費削減のまつわるメリットや人件費削減の進め方などを詳しくご紹介しました。経費削減の中でも人件費削減は、一時的に見ると最も削減効果が高い一方、長期的に見ると経営をさらに悪化させる可能性もあるリスクの高い方法といえます。リストラや減給など最悪の方法を取らなくていいように、まずは本記事でもご紹介した人件費管理を徹底し、適正値を意識して店舗運営を行っていきましょう。

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